今では“未病”は西洋医学の範疇となっている

“未病”というのは「未だ病にあらず」という意味で、病気でない状態を指しています。元々は東洋医学の発想で、「自覚症状はあるのに検査をしても異常がない」状態をいいます。西洋医学の治療は異常が検査によって見つかり、それに病名がつけられて治療が行われますが、異常が見つからない“未病”は身体を全体的にみて、本来あるべきところに整えていく東洋医学の出番ということになります。こういった“東洋医学的未病”に対して、「自覚症状がないのに検査をすると異常がある」状態は“西洋医学的未病”とされます。
生活習慣病は初期段階では自覚症状がないものがほとんどなので、わざわざ未病という言葉を使わなくてもよいのではとは誰もが思いつくことです。その思いついたままに聞いてきた雑誌記者がいます。なんで“未病”という言葉を使っているのかという質問ですが、その答えの一つは日本未病システム学会が分類して定義を示しているからです。一般にはわかりにくくても医師などの専門家が決めていることなのでよいのではないか、という考えもあるかもしれませんが、実際に治療を受ける未病状態の人は一般の方々なので、わかりやすい説明は必要です。
そこで二つ目の答えですが、“未病は病気でない”というのが大事なキーワードです。これは以前にも紹介したことですが、生活習慣病は“病”という言葉がついているので、高血圧や糖尿病、脂質異常症(高中性脂肪血症、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症)の診断基準を超えた人は「自分は病気になった」「病人になった」と考えがちです。しかし、なってしまったのは“患者”であって“病人”ではありません。
患者は医師によって診てもらっている人のことで、病気でない患者と病気の患者に大別されます。病気の定義はWHO(世界保健機関)によって「自立できなくなった人」を指しています。血圧が高かろうが血糖値や中性脂肪値が高かろうが、自立できている限りは、つまり普通に生活できている間は病気ではなく、“健康”ということになります。この健康状態から糖尿病の合併症、心筋梗塞や脳梗塞などの医療機関・医療従事者の助けがなければ生活できない状態にならないようにするのが未病のポイントです。ここにアプローチするのが“西洋医学的未病”の役割ということになります。
文字だけの説明ではわかりにくいので、日本未病システム学会の公式サイトの「未病とは」を見てもらえればと思います。