便秘は、便通は2~3日おきにしかない状態のことと思われがちですが、排便回数が少ないだけでなくて、便がとても硬くなり、腹痛がある場合や排便のときに苦痛を感じる状態を指しています。便秘には十二指腸潰瘍や腸閉塞といった病気によって起こる急性便秘と、特に病気がなくても起こる慢性便秘があります。一般に多くみられる便秘には、弛緩性便秘と痙攣性便秘があります。
過敏性腸症候群によって自律神経の調整が乱れることで大腸と直腸の間のS状結腸が収縮して便秘を起こすこともあります。このほかに、便秘は腸管の炎症や腫瘍、甲状腺の機能の低下などの病気によっても起こる便秘もあります。
弛緩性便秘は、大腸の緊張が低下したり、大腸を動かす腹筋の筋力が落ちているために排便機能が低下するものです。日本人の慢性便秘の70%ほどは弛緩性便秘となっています。弛緩性便秘は便の量を増やして、腸壁への刺激を高めることで改善していくことができます。そのために役立つのは食物繊維です。弛緩性便秘の場合には、アルコール飲料やカフェインが多い飲み物、炭酸飲料は普通に摂っても問題はありません。
痙攣性便秘は、ストレスや過労などで神経障害を起こし、そのために大腸が痙攣して起こります。痙攣性便秘の場合には、腸壁への刺激が強くなると、かえって状態が悪くなるので、食物繊維の多い食品は避けなければなりません。
日本人の成人は乳糖分解酵素が少ないため、乳糖が多く含まれている牛乳を飲むと便が軟らかくなる人が多くみられます。こういう人で弛緩性便秘の人は、牛乳を飲むことで便秘の解消につながります。しかし、痙攣性便秘の人では、牛乳を飲むと腸壁への刺激が強くなって、かえって症状が悪くなります。痙攣性便秘の場合には、アルコール飲料やカフェインが多い飲み物、炭酸飲料は避けるように指示されます。