「信じる者は救われる」という言葉はキリスト教の発祥ですが、今では他の宗教でも使われるようになっています。使われる文字こそ使用者によって少しずつ異なるものの、神様を信じることで救われるという意味とともに、自分自身を信じることで救われるという意味も含まれています。自分自身のことを信じられないようでは、神様を信じても本当に救われることはないという深い意味合いもあるのです。
神様のように信じるのに値する人ならよいのですが、もともと信じるに値しないような人のことを信じてしまったら、救われるどころか「足元を掬われる」ことにもなりかねません。
健康情報も同じようなことがあって、情報源を信じて健康づくりに取り組むときには、情報の発信者が信じるに値するのか、そもそも発信されている情報が間違いないのかを知っておく必要があります。テレビ番組に、よく登場する医学博士が話していることは簡単に信じてしまいがちですが、その先生が専門分野として研究しているのか、が気になります。自律神経調整による便秘解消で有名な先生が児童の股関節外科の専門家であっても、長寿科学で有名な先生が呼吸器科の専門医であっても、これがいけないと言うつもりはありません。専門家を超えるほどの勉強を独自に続けてきたことがあるかもしれないからです。
医学博士という肩書きは大学での研究成果が認められて与えられるものですが、何を研究したのかも気になることです。医療システムの構築で医学博士となった工学系の先生が医学博士の肩書きで健康食品のことを語っていたり、精神医療への貢献が認められて医学博士となった僧侶が健康食品の有効性を語っていたときには、さすがに参ってしまいました。
そもそも医学教育として栄養学を学んでこなかった医師が栄養を語ることに、大きな疑問を感じます。卒業した医学系大学の講義に栄養学があったのか、あったとしても選択科目となっていて学ばなくても卒業できたのか、といったことも確認して、ちゃんと学んできたのかを聞いてからコメンテーターとして選んだほうがよいのではないか、ということをメディアの方にアドバイスしているのですが、なかなか聞き届けてもらえないのが実態です。