日本の医療費はアメリカに比べて安くて、個人の医療費だけでなく、国全体の医療費も低くなっています。ところが、医療費のうち医薬品にかかる割合は日本では約25%と、アメリカの2倍以上(約12%)になっています。
医療費が高いアメリカで、日本よりも医薬品の使用が少ないのは、アメリカの医療制度が関係しています。日本の医療制度は出来高払い方式で、医薬品を多く使うほど医療機関の収入が多くなる仕組みとなっています。
これに対してアメリカは定額払い方式で、医薬品を多く使っても少ない量であっても、医療機関が得られる収入は同じです。つまり、医薬品を多く使うほど医療機関は損をするので、医薬品を少なく使用して治療するというのが基本となっています。
東京にいたときに、多くの医学系学会の役員と付き合ってきた中で、医薬品の使用量が多い理由について聞いてきました。このことを批判できるのは、役員を務める医師は大病院の勤務医が多く、医薬品での収益が少しくらい減ったからいって経営に影響が出るようなことがないからです。また、医師の技術で多くの収入を得ることができる医療機関でもあるからです。
一つの病気で医療機関にかかっていた患者が、他の病気になったときには、新たな医薬品の使用に合わせて以前から使っていた医薬品を減らして調整するのは普通のことです。例えば糖尿病の治療歴が長かった患者が、その影響で動脈硬化になって脳梗塞となった場合には、急を要する治療の医薬品をプラスした分、糖尿病の医薬品を減らすこともあります。
脳梗塞から認知症の症状が悪化した場合には、認知症の合わせた医薬品が使われます。ところが、その多くは以前に使っていた医薬品に、新たな医薬品をプラスする例が多くみられます。急性期で特別に使用していた医薬品を、安定期になってからも使い、さらに不眠症があった場合には睡眠薬を使います。
その睡眠薬も、以前の医療機関で使われていたものに、別の種類のものをプラスするといった方法がとられて、本来なら1種類の睡眠薬で済むはずなのに、複数の睡眠薬を組み合わせて、なかなか現状に合った効果が得られないということもあります。
どうして、そのようなことになっているかというと、地方では糖尿病の医薬品、脳梗塞の医薬品、認知症の医薬品を、それぞれの医療機関で処方してもらい、余計な医薬品を使い続けるということも起こっています。これを「持ちつ持たれつの関係」で、それぞれの医療機関が医薬品を減らさないシステムだから、という説明を受けていたのです。
調剤薬局では、お薬手帳の記録を見て、複合したり、使いすぎの医薬品を減らすべきですが、医療機関の処方箋が回ってこないと困るということから、処方箋に物申すわけにはいかないという事情を説明されたこともありました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕