健康・火の用心9 塩分が減っても高血圧が増えている

塩分は高血圧の原因であるとして、減塩運動が行われています。塩分さえ減らせば高血圧にならないのかというと、塩分調整によって効果があるのはナトリウム(食塩)感受性のある人で、その割合は高血圧の人の20%ほどでしかありません。それでも減塩を呼びかけるのは、ナトリウムが水と結合して血液量を増やすことで血管の圧迫を高めることと、血管の細胞にナトリウムが入ることで細胞内の水分が増えることによって血管が内側に膨らんで、血管が狭くなることがわかってきたからです。

塩分摂取の量は、厚生労働省の国民健康・栄養調査(平成元年度)によると、平均値は10.1g(男性10.9g、女性9.3g)で、男性は減少が大きくて、女性はゆるやかであるものの減少はしています。血圧は収縮期(最高)血圧は、低下傾向にあるといっても、ここ10年を見ると男女ともに大きな変化はありません。

高血圧症患者は全国で4300万人以上と推定されていて、日本人の3人に1人は高血圧という状況です。国民健康・栄養調査によると高血圧症の有病率は男性の約60%、女性の約40%にもなっています。高血圧患者は増える一方で、減塩運動によって全体的には血圧は下がっているようでも、発症する患者は増えていることがわかります。

高血圧が原因とされる心疾患(心筋梗塞、狭心症など)は全死因の第2位(がんが1位)となっています。脳血管疾患(脳梗塞、脳出血など)は第4位です。その間の第3位は老衰で、これは日本の超高齢社会(65歳以上の高齢化率は29.1%)が影響しています。

塩分摂取量が減っても高血圧症患者が増え、血管系の疾患での死亡者数が増えているのは、他の原因が大きいと考えられます。血圧は塩分のほかには、肥満、糖尿病、ストレス、過剰な飲酒、喫煙などがあげられています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕