国立高度専門医療研究センター6機関(国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、国立長寿医療研究センター)が連携して、研究成果として「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)」を公開しています。提言のエビデンスの解説(第4回)を紹介します。
日本人の非喫煙女性、つまりタバコを吸っていない女性を対象としたコホート研究では、夫が喫煙者である場合には肺腺がんのリスクが約2倍、肺がんのリスクが約1.3倍にも高くなることが報告されています。また、閉経前の非喫煙女性で職場など公共の場所や家庭で受動喫煙を受けていたグループの乳がんリスクは、受動喫煙のないグループの約2.6倍も高いことが示されています。さらに、受動喫煙と肺がんの関連を報告した9研究のメタ解析では、受動喫煙のある人はない人と比較して、肺がんのリスクが約1.3倍高くなることが報告されています。
海外の調査結果では家庭における受動喫煙と高血圧の関係も報告されていますが、受動喫煙を避けることによって心臓病や呼吸器疾患のリスクを低下させる効果も期待されています。糖尿病との関係については、日本人を対象としたメタ解析では有意な関連は認められなかったものの、過去の世界の7研究のメタ解析では受動喫煙と糖尿病の関連も報告されています。
受動喫煙の中でも懸念されているのは妊婦の受動喫煙で、妊娠中・産褥期のうつ、早産、生まれてきた子どもの呼吸障害や発達遅延のリスクが増加するとの報告があります。受動喫煙によって乳幼児突然死症候群のリスクが2〜3倍、肺炎や気管支炎、中耳炎、気管支喘息のリスクが1.5〜2倍に増加することが示されています。受動喫煙をしていた子どもは、将来的に喫煙しやすいことも報告されていて、さらに受動喫煙が広まる可能性があります。この鎖を切断するには、妊娠前からの禁煙と受動喫煙を避けることが重要になります。