健康情報108 配偶者の心血管疾患により個人のうつ病リスクが増加

日本におけるうつ病の発症者数は増加傾向にあり、うつ病患者の数は100万人以上に上ると報告されています。うつ病は健康や幸福度、労働の生産性に大きな影響を与えていることから、その規定因子を明らかにすることは喫緊の課題です。

過去の研究では、個人レベルでは心血管疾患とうつ病に、さまざまなつながりがあることは多く報告されています。その一方で、配偶者の心血管疾患はパートナーのメンタルヘルスに与える影響に関するエビデンスは限られています。

ボストン大学公衆衛生大学院、京都大学大学院医学系研究科、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究グループは、全国健康保険協会(協会けんぽ)の生活習慣病予防健診、医療レセプトのデータ(約28万人)を用いて、配偶者の心血管疾患によって本人のうつ病リスクが上昇することを明らかにしました。

研究では、全国健康保険協会に加入する世帯主(被保険者)とその被扶養者を対象として、被扶養者の心血管疾患発症(脳卒中、心不全、心筋梗塞)の有無における世帯主のうつ病リスクの変化を比較しました。

日本における最大の保険者である全国健康保険協会のデータを用いて、27万7142組の20歳以上の夫婦のペア(平均年齢58.15歳)が作成されました。

2016年度から2021年度における最大6年間の追跡の結果、配偶者(被扶養者)が心血管疾患を発症した夫婦では、配偶者が心血管疾患を発症していない場合と比較して、世帯主がうつ病リスクを発症するリスクが13%高いことがわかりました。

この関連は性別や年齢などの属性に違いは認められず、配偶者の発症した心血管疾患が入院を要するような重症なケースでは、より強い関連が認められました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕