健康情報116 ハイブリッド方式の運動による高齢者の認知・身体・心理・集団機能

世界の高齢化のスピードは以前よりはるかに速くなっており、60歳以上の人口は2050年までに全世界で21億人になると言われています。高齢者にとっても社会にとってもプラスとなる余生を送るためには、高齢者の身体的・精神的能力を維持することが極めて重要です。

身体運動と認知トレーニングの両方を介入プログラムに組み込むことが、トレーニングプログラムの効果を最大化するために有利であると考えられています。そのような身体運動と認知的要素の両方から構成されるトレーニングプログラムにSSE(スクウェア・ステッピング・エクササイズ)があります。

SSEは高齢者の認知機能低下を遅らせる運動トレーニングとして有望です。しかし、コロナウイルスの大流行を踏まえると、SSEをオンラインで行う可能性を探ることは重要でした。
そこで立教大学スポーツウエルネス学部の川端雅人教授は、家にいながらSSEをオンラインで実施するためのプロトコルを考案し、活動的でない若年成人と高齢者を対象にオンラインによるSSEの短期的な有効性について報告しています。

しかしながら、コロナウイルスと共存していく必要があることを考えると、高齢者に対するSSEアプローチの別の選択肢を模索することは有用です。

そこで非活動的な高齢者を対象に、SSEをオンラインと対面を交えたハイブリッド方式で行った場合の長期的効果について包括的に検証しました。

川端教授は南洋理工大学の研究グループとともに、シンガポールの高齢者に対して、オンラインと対面を交えたハイブリッド方式でSSEの介入研究を行い、ハイブリッド方式で行うSSEが高齢者の認知・身体・心理・集団機能を著しく改善することを明らかにしました。

研究には、身体的障害や内科的疾患のない健康であるものの活動的でない合計93名の高齢者(男性19名、女性74名、年齢68.3歳±5.7)が参加しました。

介入群の参加者58名(男性9名、女性49名)はSSEの未経験者で、高齢者対象のアクティビティ・センターで、12週間に渡ってハイブリッド方式(Zoomを用いたオンラインによるインストラクターの指導を受けながら2〜3のグループとして対面で運動)でSSEを実施しました。

一方、対照群の参加者35人(男性10人、女性25人)は、研究期間中、新しい活動を始めることなく、通常の身体活動レベルと維持するよう指示されました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕