健康情報117 日本人の高血圧の健康格差が拡大傾向

健康格差は所得などによる健康の差異で、健康格差の解消は国の政策である「健康日本21(第二次・第三次)」の基本的な方向の一番目に健康寿命の延伸と並んで位置づけられています。

高血圧は、心血管疾患、脳卒中、認知症、慢性腎臓病の主要なリスク要因である上、有病率が非常に高いため、公衆衛生上の大きな問題です。

健康行動の格差は、高血圧の健康格差に寄与している可能性がありますが、このことを調べた研究は近年では少なく、解析方法も古典的です。

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科の研究グループは、京都大学、大阪国際がんセンターとの共同研究で、健康格差の解消方法を探るため、修正可能なリスク要因が、高血圧の所得による健康格差と、それを説明する行動について分析を行いました。

2009年から2015年までのレセプト情報・特定健診等情報データベースの特定健診・特定保健指導(メタボ健診)に参加した40〜74歳、延べ1億人を超えるデータが繰り返し、横断研究として解析に用いられました。健診受診場所の市町村の平均所得を、社会経済状況の指標として分析されました。

男性延べ6868万4025人の平均年齢は54.7歳、女性延べ5911万8221人の平均年齢は56.7歳でした。高血圧の有病率は、高所得者層(男性33.3%、女性21.5%)よりも低所得者層(男性48.6%、女性40.2%)の方が高いという健康格差が認められました。健康格差は経年的に増加する傾向がありました。

高血圧の定義を血圧だけとして、降圧薬の有無で層別した分析も実施したところ、降圧薬を使用していない人の方が健康格差が大きくなっていました。また、所得が低いほど不健康な行動や肥満が多い傾向にありました。

ただし、女性においては所得が高いほど喫煙や飲酒が多くなっていました。

修正可能なリスク要因は、所得と高血圧の関連を男性で10.6%、女性で15.1%を説明しました。

男性では、飲酒と肥満が高血圧の格差を、それぞれ8.8%、5.5%を説明しました。女性では、肥満が18.8%を説明しました。

運動不足(1日30分以上の軽く汗をかく運動を週2日以上、1年以上実施に「いいえ」と回答)は経年的に格差を説明する割合を増加させていました。降圧薬を服用している女性では、喫煙が5.5%を説明し、比較的高くなっていました。

その結果、経年的な高血圧の格差の拡大傾向や、肥満などを格差に寄与する修正可能なリスク要因として重要であることが明らかになりました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕