飲酒したアルコールは、体内で酢酸と二酸化炭素に代謝されたのち体外に排出されます。その代謝過程でアセトアルデヒドができます。日本人は、アセトアルデヒドを分解する酵素(アルデヒド脱水素酵素)の働きが弱い日本人が約半数います。
働きが弱い人は、飲酒後に血中のアセトアルデヒド濃度が、お酒に強い人に比べて非常に高いことが知られています。
アセトアルデヒドを含むアルデヒドは、化学反応性が高く、細胞内に入ると生体分子(DNA、RNA、タンパク質等)の機能を阻害します。例えば、DNAとタンパク質との間では、アルデヒドが架橋反応を触媒することで、DNAからタンパク質が離れなくなってしまうと言われています。
飲酒によって発生するアセトアルデヒドが、我々の持つDNAに対して、どのような傷をもたらすのか、そして、どのように修復されていくのかは不明でした。
東京都医学総合研究所ゲノム動態プロジェクト、ゲノム医学研究センターの研究グループは、アサヒクオリティーアンドイノベーションズと共同で、アルコール代謝産物アセトアルデヒドがDNAを傷つけることを発見しました。
世界保健機関(WHO)の最新研究によると、全世界でがんと診断されたうち約4%、75万人がアルコール摂取に起因すると言われています。近年の研究によると過剰飲酒で最も多いがんは、食道がんと肝臓がん、女性の乳がんです。特に東アジア圏のアルコールに起因するがん比率は最も多いとされます。
研究グループは、アセトアルデヒドが細胞に及ぼす影響をより簡便に調べるために、蛍光蛋白質を利用した手法を開発しました。この方法により、今まで細胞毒性を測定するために必要な日数が約2週間から数日に短縮することが可能となりました。
今回の研究では、特に細胞の中にあるDNAに対してアセトアルデヒドが、どのように作用するかが調べられました。
細胞にはDNA損傷の種類に応じて複数の修復経路が存在します。RAD54遺伝子は、修復経路の一つである相同組み換え経路に機能することが知られています。
RAD54欠損細胞では、相同組み換え修復が起こりにくくなっています。そこで、正常細胞とRAD54欠損細胞に対して、アセトアルデヒド処理を行い、細胞の様子が観察されました。
その結果、相同組み換えが起こりにくいRAD54欠損細胞では、正常細胞に比べてアセトアルデヒドに対して死にやすいことがわかりました。このことは相同組み換え修復を必要とするDNA損傷がアセトアルデヒドによって発生していることを意味しています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕