健康情報5 枕の高さと脳卒中の関係性

枕の高さが睡眠の長さや質に影響することは以前から研究が行われてきましたが、脳卒中に関わることについての研究成果が発表されました。発表したのは国立循環器病研究センターの脳神経内科のグループで、脳卒中の原因の一つである特発性椎骨動脈解離は、枕が高いほど発症率が高く、固い枕では関連が高いことを立証しました。そして、殿様枕症候群という新たな疾患の概念を提唱しています。

脳卒中は高齢者に起こりやすい病気ですが、若年〜中年にも特殊な原因で起こることがあり、その原因の一つが特発性椎骨動脈解離で、首の後ろの椎骨動脈が裂けることによって脳卒中が起こります。

働き盛りの年齢の患者の約18%に何らかの障害が残り、根本治療がないことから発症予防のための原因究明が求められていましたが、約3分の2の患者で原因が不明となっていました。

研究グループは、起床時に発症する誘因のない特発性椎骨動脈解離の患者の中に、極度に高い枕を使っている人が存在することに着目して、高い枕との関連について検討をしています。

国立循環器病研究センターで2018〜2023年に特発性椎骨動脈解離と診断された症例群と、同時期に入院した年齢と性別をマッチさせた脳動脈解離以外の対象群を設定して、発症時に使用していた枕の高さを調べました。

高い枕の基準として、12cm以上を高値、15cm以上を極端な高値と定義しています。

また、高い枕の使用と特発性椎骨動脈解離の発症との関連を調べるとともに、起床時発症で軽微なものも含めて先行受傷機転のない、臨床的に高い枕の使用が発症原因として疑わしい患者の割合も調査されました。

症例群53名と対照群53名を調査した結果、高い枕の使用は症例群が対照群より多く、12cm以上の枕では34%対15%、オッズ比2.89倍、15cm以上の枕では17%対1.9%、オッズ比10.6倍で、高い枕の使用と特発性椎骨動脈解離の発症には関連が見られました。

また、枕が高めれば高いほど、特発性椎骨動脈解離の発症割合が高いことも示唆されました。この関連は、枕が硬いほど顕著で、柔らかい枕では緩和されました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕