健康情報70 2型糖尿病への集約的治療による歯周病の改善

糖尿病は我が国で1000万人が発症していると言われており、その治療にはチームとして様々な医学的管理に取り組む必要があります。糖尿病の発症や進行と歯周炎が相互に関わりがあることは多くの科学的根拠によって示されており、歯科治療もその完治の一部を構成しています。

近年では、2型糖尿病をもつ患者への歯周病の治療によって、血糖値が改善する効果が実証されています。しかし、逆向きに糖尿病の治療が歯周炎を改善するかの検証については、ほとんど研究がなされていませんでした。

そのため、糖尿病治療において、内科と歯科との連携が不十分になっている場合があります。

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科歯周病学分野の研究グループは、2型糖尿病によって血糖管理が困難になっている患者において、歯周病の原因であるプラークの付着量に関わらず、炎症を起こしている歯周ポケットの総面積がヘモグロビンA1cおよび空腹時血糖値と有意な相関があることを報告しています。

この関連に基づいた仮説として、血糖管理を改善させると歯周病が軽減する可能性が考えられました。

そこで研究グループは、九州大学、横浜市立みなと赤十字病院、総合南東北病院との共同研究で、2型糖尿病によって血糖管理が困難な患者を対象に、糖尿病の集約的治療が歯周炎の状態に及ぼす影響を検討し、歯周病の炎症や検査値が改善することを明らかにしました。

被験者は東京医科歯科大学医学部附属病院の糖尿病・内分泌・代謝内科を2型糖尿病で受診し、血糖管理が困難で2週間の教育入院と継続的な外来診療を受け、歯科での検査も希望された71名のうち、緊急を要する歯科治療の必要がない51名を対象としました。

集約的な糖尿病治療として、すべての被験者は教育入院中に、薬物療法に加えて、カロリー制限のための食事療法と、定期的な運動を含む生活習慣の改善の指導を受けました。退院後も外来患者として、引き続き治療と生活指導を継続しました。

また、研究開始時点、開始後1、3、6か月に糖尿尿治療の評価を行う包括的な検査の一環として口腔内検査が行われました。

その結果、6か月の観察期間終了後に解析の対象となったのは33名でした。平均ヘモグロビンA1cは9.6±1.8%から、1か月後には9.9±1.2%に、6か月後には7.4±1.3%に改善しました。

また、口腔内の変化としては、歯の本数は全被験者において変化はなく、歯周病のパラメータは6か月後に、口腔内全体の歯周ポケット深さの平均は2.3±0.6mmから2.0±0.5mmへ、4mm以上の歯周ポケットの割合は12.3±13.4%から6.8±9.3%へ、プロービング時出血は25.3±18.8%から9.7±9.7%へ、歯周ポケット総面積は318.3±280.0mmから134.8±165.6mmへと改善しました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕