健康情報79 歯の喪失・咀嚼困難・口腔乾燥と認知症リスク

これまでの研究から歯数の少ない人で認知機能の低下や認知症のリスクが高くなることが報告されています。しかし、口腔状態と認知機能は互いに影響し合っていて、そのことにより口腔状態と認知機能リスクとの関連が大きく見積もられていた可能性があります。

東北大学大学院歯学研究科では、口腔状態と認知機能が互いに影響し合うことによる相互作用を除外したより適切な統計学的手法を用いて、口腔状態と認知機能との関連を評価しました。

研究は、65歳以上の高齢者約3万8000人を対象とした9年間の追跡調査です。2010年と2013年の2時点での口腔状態と認知機能を測定し、周辺構造モデルという分析方法を用いた統計解析により、口腔状態と認知機能の相互作用の影響を除外して実施しました。

分析に際しては、性別・年齢・教育歴・等価所得・婚姻状況・併存疾患(高血圧、糖尿病、がん、脳卒中)・喫煙歴・飲酒習慣・歩行時間の影響も取り除かれました。

その結果、対象者3万7556人における認知症の発症率は100人あたり年2.2でした。

認知症上昇のリスクが歯数19本以下の人では1.12倍、歯がない人(0本)では1.20倍高くなることが示されました。

また、咀嚼困難がある人で、1.11倍、口腔乾燥のある人で1.12倍、認知症のリスクが高いことも明らかになりました。

しかし、むせと認知症との間には統計学的に有意な関連は示唆されませんでした。

この研究によって、口腔状態と認知機能との相互作用による影響を考慮しても、歯数が少ないこと、咀嚼困難を有すること、口腔乾燥を有することが認知症リスクの上昇と関連することが示唆されました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕