健康格差は、社会経済状態(教育歴・職業・所得など)により集団間で健康状態に系統的な差があることを指します。このような個人の健康に影響を与える社会的要因は「健康の社会的決定要因」と呼ばれ、健康格差の縮小は公衆衛生上の重要な課題となっています。
我が国では健康格差の宿所は2013年の「健康日本21(第二次)」で初めて全体目標に含まれるようになりました。健康格差の実態を明らかにする(モニタリングする)社会掲載指標の一つとして、国際的には「教育歴(学歴)」が広く用いられ、政府統計による体系的なモニタリングや国際比較研究などが行われています。
一方、我が国では教育歴ごとの死亡率の統計データがなく、健康格差対策を議論するためのモニタリングが十分に行われていません。
政府統計・行政資料データ活用に関して、欧米では個人IDを活用した統計間のデータリンケージが広く行われ、保健医療政策や健康格差対策に活用されています。我が国の保健統計には人口動態調査、国民生活基礎調査、国民健康・栄養調査などがありますが、統計間のデータのデータリンケージは個人IDがないなどの技術的問題のために難しいのが現状です。
このため、統計法の改正などで2010年代から公的統計の匿名化個票データの利活用(2次利用)が広がったものの、統計間のデータリンケージは十分に実施されてきませんでした。
国立がん研究センターがん対策研究所データサイエンス研究部の研究グループは、国勢調査と人口動態統計(死亡票)の匿名化個票データの突合により、日本人の教育歴ごとの死因別死亡率を初めて推計しました。
全人口の9.9%のサンプル人口を対象に地域や婚姻状況など人口分布の偏りを補正し、年齢調整死亡率を算出した結果、全死因では男女ともに「大学以上卒業者」と比べて、「高校卒業者」は約1.2倍、「中学卒業者」は約1.4倍死亡率が高いことが明らかになりました。
人口分布を考慮した格差指標は日本では約1.5倍で、欧米など諸外国からの報告(おおよそ2倍前後)と比較すると、日本人の健康格差(教育歴ごとの死亡率の差)は小さい可能性が示唆されました。
死因別にみると、脳血管疾患、肺がん、虚血性心疾患、胃がんの死亡率の差が特に大きいことから、喫煙に代表されるリスク要因が狭域歴などの社会経済状態により異なることで、死亡率の差につながっていることが推察されました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕