子どもの不眠は、肥満などの健康問題のほか、学業成績、認知能力、行動の問題、自殺など、心身の健康に影響することが近年明らかになってきています。また、神経発達症があると睡眠も問題が多いことがわかってきています。
しかし、一般の就学前の幼児の睡眠問題の有病率、家庭背景や生活習慣の影響について詳細に調査した研究は国内外でもありません。
弘前大学大学院保健学研究科心理支援科学専攻の研究グループは、2013年から弘前市の全5歳児に対する5歳児発達健診を毎年実施しており、その結果を用いて①15歳における睡眠問題の有病率がどのくらいあるのか、②発達障害児がどれくらい多く睡眠問題を抱えているのか、③家庭背景や生活習慣は睡眠問題に関係するのか、の3点を明らかにするために睡眠に関する疫学調査を行いました。
その結果、5歳の子どもの18%に睡眠問題が存在することがわかりました。さらに、自閉スペクトラム症(ASD)の50.4%、注意欠如多動症(ADHD)の39.8%に睡眠問題がありました。
神経発達症のない5歳児の睡眠問題の有病率は14.8%であり、自閉スペクトラム症で3.4倍、注意欠如多動症児で2.7倍も睡眠問題の有病率が高いことがわかりました。
家庭環境では収入200万円未満では30.5%、兄弟姉妹なしで24.2%、生活習慣では就寝時間が22時以降で30.7%、起床時間が7時30分以降で30.7%、睡眠時間が9時間未満で25.3%、入眠遅延が30分以上で35.3%、スクリーンタイム(テレビやビデオなどの画面を見ている時間)が2時間以上/日で21.1%であり、これらのグループでは有意に睡眠障害の有病率が高いことが明らかになりました。
睡眠問題の有病率は、2018年と2019年に弘前市5歳児発達健診に参加した5歳児2055人から算出されました。さらに、家庭背景と生活習慣の要因における睡眠問題の有病率を算出するために、2014年と2015年に精密検診に参加した5歳児281名を追加し、合計2336人を対象としました。
未就学児のための日本睡眠質問票を用いて、合計スコアが86以上である場合に、睡眠問題があると定義し、睡眠に影響を与える10因子について調べられました。
解析の結果、10因子のうち8つ(診断、収入、兄弟姉妹の数、就寝時間、起床時間、睡眠時間、入眠遅延、スクリーンタイム)において有意に睡眠障害の有病率が高いグループが明らかになりました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕