健康情報98 子どもの眠り改善に向けた家庭に応じたアドバイス

睡眠は心身をリフレッシュさせ、健康を維持するのに欠かせない生理機能です。さらに近年、乳幼児期の睡眠の問題が後年の発達に悪影響をもたらす可能性が危険視されています。

ところが、日本の子どもの睡眠時間は世界一短いとされています。さらに小児睡眠の専門家が非常に少ないということ、また共働き家庭が多い近年では面談による指導が難しいという課題がありました。

大阪大学大学院連合小児発達学研究科の研究グループは、研究グループが2014年からスマートフォンを用いた双方向性睡眠啓発アプリ「ねんねナビ」を開発して、2017年から青森県弘前市を含む国内4自治体に社会実装を実施して、有用性を確認してきました。

このアプリは、家庭の事情に合わせたスモールステップのアドバイスを複数送信し、その中から養育者が1つを選んで実行するという養育者ファーストのアプリとして開発されました。

単に科学的に妥当なアドバイスを一方的に送信するのではなく、子育てに長期的に伴走するスタイルを採用しており、養育者のエンパワメントに特化した睡眠支援ツールとしては世界で最初のものです。

自治体での半年間の介入におけるドロップアウト率は0%と極めて少なく、睡眠リズムの改善や寝つきがよくなるなどの睡眠習慣上の改善が認められたのに加え、睡眠の改善を通して「育児に自信が持てるようになった」という声が多数ありました。

より多くの家庭をサポートするため、AI開発の専門家として大阪大学産業科学研究所の駒谷和範教授の指導のもと、指導システムにAI技術を導入し、家庭に応じて調節された助言が自動的に抽出されるシステムを開発しました。

これまで34家庭が研究に参加し、26家庭が使用期間を完了しており、明らかなドロップアウトは見られていません。また、AI技術に基づく指導下でも約8割の家庭が「子どもの睡眠に改善がみられた」と回答し、約6割の家庭が「寝かしつけがしやすくなった」、約半数の家庭が「子育てがしやすくなった」と回答するなど、専門家による指導時と大きく変わらない有用性が報告されています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕