健康診断の減少が日本人の健康度を低下させる

新型コロナウイルスの感染拡大で大きな被害を受けているのは観光業、飲食業、旅行交通業、小売業、製造業、イベント業だけでなく、日本人の健康を支えてきた健康診断の業界にも大きなダメージを与えています。そのダメージは業界で終わらず、将来的には日本人の健康度にも影響を与えることは明らかです。
健康診断は“健診”と訳されます。同じ「けんしん」という読み方をする“検診”という言葉もあります。健診は地域や企業、学校などで実施される健康診断で、全員の健康診断を実施することで、病気の早期発見と、リスクが高い人を浮かび上がらせることを目的として実施されます。大きく網をかけるようにして、その中から大病に進む可能性がある人を炙り出しています。
これに対して、検診は、がん検診、歯科検診などのように特定の臓器を検査することを目的として実施されるものです。ターゲットにした臓器などを徹底的に調べるもので、健診で炙り出した高リスクの人に対して行われるもので、検診の結果がよかったとしても、その他のリスクがないとは言えないということです。
検診は健診があってこそ、その効果が得られるというわけですが、健康診断の世界では健診は1次予防、検診は2次予防、初期の病気が発見されたときに重度に進行しないようにするのは3次予防と呼ばれます。健診も検診も1次予防、重症化しないように検査するのを2次予防と分類されることもありますが、どちらにしても検査を受けないことには予防はできません。
新型コロナウイルスの治療の最前線の医療機関では、他の医療行為が充分にできず、今後の病気の拡大が懸念されています。懸念されているのは最前線の医療機関だけでなく、他の病院もクリニックも受診者が大きく減っています。医療機関に行くことが感染リスクを高めるという不安があって、“不要不急”の状態で医療機関に行くことを控えている人も少なくありません。
テレワークが進み、企業での健診が減っています。企業で健診を受けない分だけ、自治体が実施する健診に流れているのかというと、それほどは増えていません。増えていないどころか、外出の自粛のムードそのままに自治体の健診も減少傾向にあります。日本人の健康を支えてきた健診の受診者が減れば、その分だけ自分の身体の状態がわからないまま生活をして、先々の病気のリスクが高まり、世界のトップクラスの健康度を誇ってきた日本人の将来に黄信号、赤信号が灯ってきている状態なのです。