有益な情報を持っている人を合わせることで、新たな価値を生み出すきっかけになるのは、どの世界でもあることで、ウォーキング団体の役員と会員組織の活用で実績のある営業マンの面談をセッティングしました。双方とも是非とも会って話を聞きたとのことで、両方のメリットになることだと感じて、初顔合わせの席に同席しました。
団体役員は広告業界で名を馳せた方で、過去の実績が活かされて新たな世界でも活躍されていたので、その実績を語ることで自分を知ってもらいたいという意向がありました。そのことは営業マンにも伝え、時間がかかるかもしれないこと、相手の話が終わるまでは中断しないこと、それ以降に本題を切り出すことを確認して臨みました。
予想通りの展開になり、これから営業マンが話をする番になって、初めて口に出したのは役員も私も唖然とさせるような言葉でした。それは「今度は私が自慢話をさせてもらいます」。役員の話は自慢話ではなく、過去の実績と現在の仕事の関わりであり、それを自慢話と感じたとしても、その場で言うことではなく、まさに「偽る脳力」が発揮される場面でした。
その話の内容も仕事ではなく、自分の家柄や生い立ちから始まって、最後の提案の文面を見せて短く話をまとめたという感じでした。家柄や生い立ちということでは、役員の祖父は歴史の教科書にも出てくる方で、それをひけらかすこともなく、淡々と仕事に関わる話をしていたのですが。
後日に営業マンから会ってほしいとの連絡があり、反省の弁があるのかと思っていたのですが、本人の口から聞かれたのは「どうして連絡が来ないのか」という疑問の声でした。
相手の自慢話に対して、自分も同じように返しただけ、というつもりだったようです。
自慢話が人間関係を壊すということであれば、私が付き合ってきた医学系の学会や健康関連の団体の役員は付き合うことが不可能な人たちになってしまいます。過去にやってきたことは、それこそ自慢すべき内容で、自慢するような話が出てこない専門家とは距離を置きたくなります。
実際はどうあれ自慢話と感じたら、自分を偽ってでも付き合うのは営業マンの鉄則と思っていたのですが、そうではなかったという結果です。後に営業マンを紹介してくれた広告関係の方に聞いでも、「自分を小さく見せたくない、見られたくないという人ではない」ということでした。
そのときにだけ急に“自慢返し”をしないと気が済まない状況であったとしても、「偽る脳力」を意識していれば、上手に乗り切ることができたはずだったという事例でした。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕