新たなことに挑戦しようとするとき、初めに考えるべきことは、成功のために、継続のために何をすべきかということです。そのためには困難なこと、障害になることに正面から向き合うことだと認識しています。ところが、肯定的な考えを示す前に、否定的なことを言って、防衛線を張ろうとする人が少なからずいます。
できることを先に述べるべきときに、できないことかもしれない理由を述べるようなことでは物事が勢いよく進まないのは明らかであるのに、そのような意見ばかりで、議事録を見るのが嫌になることがあります。
できない理由が、工夫や努力によって解決可能なことであるなら、まだやりようがあるかもしれません。ところが、円高だから、物価高だから、人手不足だから、少子高齢社会だから、地球温暖化だから……と自らの努力ではどうにもならない理由をあげられると、初めから達成させる気がないことは明らかです。
そのような困った状態な直面して、経営者や事業の責任者が叱咤激励して、とりあえずは否定的なことではなく肯定的な考えで進んでいこうと経営者なりが発言して、撤退は避けることができたという例もあります。その通りに進むこともあれば、掛け声倒れになることも多く目にしてきました。
経営者自身が、うまくいかなかったときに、取り引き相手は自分が言っていることを理解できない、人間に問題があるというような発言を繰り返していると、経営者の期待感とは違った行動を社員がするようになります。実施することを決めたのだから、すぐに着手すべきであると思っても、社員は先延ばしにしようとします。
熱があるのは初めだけで、そのうち熱が冷める、忘れてしまうということが過去にあると、それを社員は期待するようになります。忘れるだけでなく、前言を翻すことがあって、それが、やりたくないと思っている社員と同じ理由(円高だから、少子高齢化だから……)ならまだしも、個人的ではないかと言われかねない理由だと、頑張る気持ちが失せてしまいかねません。初めから頑張るように見せかけても実際には頑張っていないということもあります。
その前言を翻す理由が、客が、コンサルタントが、先代が、家族が……ということだと、自分の努力が通じないことは多くの人は気づきます。その誰もが気づくようなことに、最も気づいていないのが経営者であると、この人のために、この人が立ち上げた仕事に力を注ごうというモチベーションが湧いてこなくなります。
そのようなことがないようにするには、自らの気持ちを抑えて、よい方向に進めていく「偽る脳力」が重要になるのですが、「自分に正直に生きている」という今の時代には通じにくいことを、いまだにアイデンティティとして掲げている経営者が多いのも事実です。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕