医薬品としての三大ヒトケミカル

メディア関係者から、以前に返答したことと同じ質問が来ることがあります。教えてもらったことを忘れたということではなく、記録や資料を調べるよりも、もう一度聞いたほうが簡単に済むということもあるようです。そういった質問に再び答える当方の姿勢がメディアの方々を安易にさせてしまうのかもしれませんが、このコーナーでも同じことを繰り返して紹介させてもらいます。少しだけ書き方を変えますが。
その質問というのは、このコーナーで再三繰り返してきた「三大ヒトケミカルは医薬品として使われている」ということで、サプリメントとして知られているα‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10は医薬品としては何に対して使われているのかということです。
α‐リポ酸は、チオクト酸と呼ばれる代謝促進の補酵素で、肉体疲労などでチオクト酸が大きく不足したときの補給のほか、リー(leigh)症候群(亜急性懐死性脳脊髄炎)、騒音性内耳性難聴の治療に使われます。L‐カルニチンは、カルニチン欠乏症、プロビオン酸血症、メチルマロン酸血症の治療に使われます。コエンザイムQ10は、ユビデカレノンの名称で、うっ血性心不全治療薬となっています。
今回、質問してきた方は、医薬品としての記事を書くためではなく、サプリメントの記事のためで、「医薬品として効果があるのに、サプリメントとして効果が出にくいのは、どうしてか」というのが主意でした。医薬品とサプリメントというと、“サプリメントは薬を薄めたもの”という誤った認識の人もいるのですが、医薬品よりも有効成分は少ないというのが一般的な認識です。
それは真実なのかというと、医薬品としてのコエンザイムQ10(ユビデカレノン)の1日の摂取上限量は30mgとなっていますが、サプリメントとしては1日の推奨量を100mgとしている商品もあります。医師の中には、医薬品では多くの量を使えないからとサプリメントをすすめている人もいます。
L‐カルニチンは効果が出にくいというのは海外の話で、そのような論文は数多くあります。しかし、日本人の場合にはサプリメントとしては逆に効果が出やすくなっています。というのは、L‐カルニチンは肉類に多く含まれていて、肉食が多い欧米人や北方系のアジア人などは体内にL‐カルニチンが多く蓄積されています。だから、サプリメントを摂っても効きにくいのです。それに対して日本人は蓄積量が少ないので、サプリメントとして摂った場合に効果が出やすいのです。
α‐リポ酸は、体内で必要になるのは天然タイプのR体です。ところが、サプリメントでは非天然型(人工型)のS体を、R体と組み合わせたものが多くなっています。これはR体のα‐リポ酸は胃液で分解されて吸収されてもα‐リポ酸として働かないために、分解されにくいようにS体とR体を組み合わせているのです。このタイプはR体が半分となっているので、摂取量に比べて効果が出にくいのは当然のことです。
α‐リポ酸は胃液で分解されやすいので空腹時に摂るのが原則です。L‐カルニチンは水溶性なので、いつ摂ってもよいのですが、たんぱく質と一緒に摂ると吸収率が高まる特性があるので、たんぱく質が含まれた食品を食べるときが摂取タイミングです。コエンザイムQ10は脂溶性なので食後に摂るのが原則です。しかし、これらの成分が一緒になったサプリメントがあり、それはいつ摂ればよいのかわからなくなります。
α‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10については、このサイトの「サプリメント事典」を参照してください。