厚生労働省の「健康日本21」では、歯・口腔の健康について目標を定めて健康づくりを推進しています。その中から成人期の口腔内の管理対策について紹介します。
1)自己管理(セルフケア)能力の向上
う蝕と歯周病の発症は、口腔内の微生物によって形成される歯垢(デンタル・プラーク)に起因しており、いずれも適切な歯科保健行動・習慣の維持によって予防することができる生活習慣病としての性格を有しています。
そのため、これらの疾患を予防するための重要な役割を果たすのは、的確な口腔清掃や甘味飲食物の過剰な摂取の制限などの食生活への配慮による自己管理(セルフケア)、家庭内管理(ホームケア)です。
毎日歯を磨く者が94.9%となるなど、口腔清掃は習慣としてはある程度定着してきていますが、個々の口腔内状況や、その他のリスクに応じた自己管理が十分になされているとは言えず、そのために必要な歯科保健知識・技術も十分に普及しているとはいえません。
これに対応するため、保健所・市町村保健センターや学校、職場などで、個人に必要性に応じた歯科保健知識・技術を習得できるようにするなど、自己管理能力の向上を支援していく体制を築く必要があります。
2)専門家などによる支援と定期管理
う蝕と歯周病の原因となる歯垢の除去は、歯の形態や歯列の状況などから、自己管理のみで完全に行うことは困難です。そのため、これらの疾患を予防し、実際に歯の喪失防止に結びつけるためには、自己管理に加えて、専門家による歯石除去や歯面清掃、予防処置を併せて行うことが重要となります。
実際に、歯科医師、歯科衛生士による適切な予防処置(フッ化物応用、予防填塞、歯石除去や歯面清掃などのプロフェッショナルケア)を組み合わせて行うことが、う蝕と歯周病を予防し、歯の喪失を減少させるのに有効であることが多くの研究から明らかにされています。
そのため、検診による早期発見・早期治療に加え、疾患の発症を予防する一時予防がより重要であることを広く認識して、個人の口腔健康管理を専門的立場から実施・支援する保健所・市町村保健センターやかかりつけ歯科医などの歯科保健医療機関(専門家)を活用し、定期的に歯科保健診査・保健指導や予防処置を受ける習慣を確立することが必要です。
また、そのための環境整備として歯科保健相談や予防処置などの予防活動を行う歯科医療機関などを増加させていく必要があります。
〔健康ジャーナリスト/日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕