早食いの習慣がある人は、親も早食いだという傾向があります。食事は、しっかりと噛んで、ゆっくりと味わって食べるのがよいと言われても、子どものときから食卓を囲む時間が短くて、少しだけ噛んで飲み込む食べ方をしていると、それが当たり前のようになってしまいます。
何回噛んでから飲み込むのかは、特別に親から教えられることがなくても、3歳児の場合には一口について15回ほどは噛んでいます。もちろん食品の硬さや調理法によっても食べるものの硬さが変わり、噛む回数も変わってくるのは当たり前のことです。
3歳児だと、まだ軟らかいものを食べているはずなのに、15回ほど噛んでから飲み込んでいるということは、そこから徐々に硬いものを食べていくようになったときには、噛む回数が増えていくようになるはずです。
その噛む習慣を続けられるようにするのは、毎日の食事の環境であり、一緒に食事をする人の食事にかける時間と噛む回数が影響を与えます。このことは親がリードしていくだけに、親の食事に対する考え方が影響してきます。
子どもの健康は誕生してからではなく、妊娠中の栄養摂取から始まっているとされていますが、さらに以前の妊娠前からの栄養摂取から始まっています。このことについては厚生労働省が「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針」を設けて、重要性を呼びかけています。
しかし、この指針の中には、噛むことについては書かれていません。指針があろうとなかろうと、その存在を知っていようと知らなかろうと関係なく、栄養摂取のためには噛むことが重要であることを伝え、それを身につけられるような食事を親が示すことが、子どもだけでなく、孫の健康にもつながることを、親元にいるときに親が子どもに教えることが大切になってくるということです。
〔健康ジャーナリスト/日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕