噛む噛むeverybody32 口腔の健康状態と労働生産性

口腔の健康状態と労働生産性の関連については、まだ研究途中であり、これからの分野とされてきたところがあります。

口腔の健康状態と労働生産性との関連について研究発表した安達奈穂子医学博士(東京医科歯科大学助教)は、歯科の健康が全身の健康に影響することを裏付けることに取り組み、口腔の健康状態のうち、どれが大きな影響を与えるのかを明らかにしようとして、歯周病、う蝕(むし歯)、う蝕を経験した歯の数、口腔関連QOLと労働生産性に関連の調査に取り組みました。

口腔の健康状態と労働生産性の関連の研究は、歯科健診を毎年実施している日本の企業の従業員712人を対象に、質問票調査、歯科健診、一般健診・特定健診データを用いて実施されました。

自記式質問票では、全身的な健康では以下の質問をしています。

1 労働生産性:「歯の不具合による遅刻・早退・欠勤」の有無、プレゼンティーズム(心身の不調を抱えながら仕事をしている状態)として「歯の不具合により仕事に集中できなかったこと」の有無、主観的健康観、健康関連QOL、メンタルヘルス、職業性ストレス、食習慣

2 口腔の健康:口腔関連QOL、口腔の自己評価、口腔衛生週間、歯科受診行動(かかりつけ歯科医の有無、定期的・継続的メンテナンス受診の有無など)

3 社会経済要因:学歴、世帯収入、職種、婚姻の有無、子の有無など
歯科健診では、歯式(歯の位置や欠損状態を示すための書式)、う蝕を経験した歯の数、歯周組織の状態

定期健康診断・特定健康診査では、性別、年齢、身長、体重、腹囲、血圧、血液検査、問診、生活習慣(喫煙、飲酒、食習慣)などを聞いています。

「口腔の不具合による遅刻・早退・欠勤」があったと回答した6.7%は、労働生産性低下の有無であるアウトカム(本質的な成果)では、喪失歯、う蝕を経験した歯の数、口腔関連QOLが低くなっていました。

「口腔の不具合で仕事に集中できなかったことがある」と回答した9.1%は、う歯、喪失歯、口腔関連QOLが低くなっていました。

この結果から、歯の不具合による遅刻・早退・欠勤の有無と口腔関連QOLが低いこと、口腔の不具合で仕事に集中できなかったことの有無と、う歯、う蝕を経験した歯の数が多いこと、口腔関連QOLが低いことの関連が示唆されました。

歯科健診が歯科受診による欠勤日数を減少させるとの研究結果も明らかにされています。これは東京医科歯科大学の研究グループによる発表です。

歯科疾患に罹患していることよる欠勤は、すべての欠勤の9.06〜26.7%を占めると報告されており、定期的な歯科健診は欠勤率を低下させるのに有効と考えられています。

研究は3930人(男性2057人、女性1873人)の労働者(平均年齢43.3±11.7歳)を対象として実施され、職場で歯科健診を受けた人は歯科受診による欠勤日数(欠勤・遅刻して通院した日数)が少ない傾向にありました。

1年間の歯科受診による欠勤日数は、歯科医院で歯科健診を受けた人で0.57±2.67日、職場で受けた人で0.12±1.20日でした。共変量で調整した結果、職場で歯科健診を受けた人は、歯科医院で歯科健診を受けた人よりも欠勤日数が0.35日少なくなりました。
〔健康ジャーナリスト/日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕