子どもの体調は、お母さんの胎内にいるときに受けたことと出産後の生活が大きく影響を与えることが多くの研究によって明らかにされています。
その研究成果として、国立高度専門医療研究センター6機関(国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、国立長寿医療研究センター)が連携して、「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)」を公開しています。その提言のエビデンスの解説から成育歴・育児歴の項目(第2回)を紹介します。
妊娠糖尿病の既往がある女性は、既往のない女性に比べると糖尿病を発症するリスクが高く、60万人以上のデータのメタ解析ではリスクが7倍以上、コホート研究だけを対象としたメタ解析でもリスクが6倍高くなることが示されています。
日本での報告は多くはありませんが、妊娠糖尿病の女性354人を対象とした後ろ向きコホート研究では、57週(中央値)の追跡期間中に約10%の妊娠糖尿病の女性が糖尿病を発症していたことが報告されています。なお、世界の9研究のメタ解析では、妊娠糖尿病によって循環器病のリスクが2倍になることが示されています。また、巨大児の出産経験があると糖尿病のリスクが増加することも報告されています。
近年、妊娠出産歴も女性の健康に大きな影響を与えることが確認されています。国際的なメタ解析からは、妊娠高血圧症候群、特に妊娠高血圧腎症にかかった女性は、そのあと数十年を経て高血圧、脳血管障害、虚血性心疾患、腎障害、さらには認知機能低下などを発症しやすいことが報告されています。しかし、妊娠高血圧症候群の既往がある女性の将来の心血管疾患リスクを有意に減少させる方法については、まだ報告がありません。そのため、妊娠高血圧症候群を発症した場合は、長期的に注意する必要があります。