野村総合研究所が、自閉症スペクトラム障害と注意欠陥・多動性障害を人材として活用できていないことによる経済損失が年間2兆3000億円になるとの推計を発表するとともに、これらの発達障害者のデジタル・IT業界での活躍が期待されていることを示しました。この発表で気になるのは、もう一つの発達障害である学習障害の人が、この推計から外されていることです。
学習障害の人は、発達障害と診断されたことがない潜在者とともに発達障害人材とされていますが、経済損失推計の実施範囲とされているのは自閉症スペクトラム障害の人と注意欠陥・多動性障害の人だけです。
自閉症スペクトラム障害の人と注意欠陥・多動性障害の人は重要な人材であるとされていて、その能力は期待されているものの、通常の業務で期待される効率よりも低いと見られています。また、発達障害者を雇用して、適した業務で活躍してもらえるようにするためにかかる経費も必要です。その分を考慮して、それでも自閉症スペクトラム障害の人と注意欠陥・多動性障害の人が働き手となることには大きなメリットがあるとしています。
ところが、学習障害の場合には、読む、書く、計算するという基本的な能力の一部が充分ではないということで、そのために業務効率は自閉症スペクトラム障害、注意欠陥・多動性障害よりも低いとみられています。そして、識字障害、書字障害、算数障害を補うために多くの労力と費用がかかるとされています。
発達障害の自閉症スペクトラム障害、注意欠陥・多動性障害、学習障害の割合は調査によって異なるのですが、今回の調査では、ほぼ同数となっています。しかし、多くの調査では学習障害は半数ほどとなっています。約3分の1である学習障害が2分の1ほどにもなるのは、自閉症スペクトラム障害と注意欠陥・多動性障害があるために、学習面での困難さが生じて、学習障害と同様の状態がみられることと関係しています。
ここから言えるのは、自閉症スペクトラム障害の人と注意欠陥・多動性障害の人は、全員が重要な人材ということではなく、学習に困難さが出ていると期待される人材からは外される可能性があるということです。学習障害のある人がデジタル・IT業界で重要な人材とされるためには、能力を発揮するための支えとなるテクノロジーが使えるレベルに学習能力を高めることが期待されています。そのためには、学習障害児の学習支援だけでなく、脳の機能を高める運動や栄養のサポートも重要となると認識しています。