ひらがな、カタカナ、漢字は、どれも文字として書くときには縦線、横線、斜め線が基本となり、曲線は縦線、横線、斜め線のアレンジとなっています。文字を書く前に、まずは基本となる筆使い(鉛筆づかい)を身につけることから始めます。初めに書くのは縦横の線だけで描くことができる図形(+)や閉じた図形(◯)で、それに続いて縦線と横線が組み合わされた図形(□)、斜め線の入った図形(△、◇)を描けるようにします。
初めのうちは歪(いびつ)であってもよいものの、いつまでもよしとしないで、最終的に文字を正確に書くための学業技能を身につけるために、図形も正確に描けるようにすることを心がけて取り組むようにします。
学習障害の識字障害では、ひらがな一文字を見て、それを読むという基本的なことにも時間がかかることがあります。文字を見て、その特徴を形で把握して、記憶の中に刻まれた、その文字の読み方を声に出して言うという流れとなります。形で把握するときに、他の文字との違いを判断するのに時間がかかり、さらに記憶から取り出して声に出すときにも時間がかかります。
文字を見ることなら簡単にできそうに思えても、見るべき文字に眼球を動かし、止めて、読み取りを開始するまでにも時間がかかることがあり、眼球の動きのトレーニングの差が識字障害の場合には影響することがあります。「ね」と「ぬ」の違いを、書き順を目で追うようにしないと判断できないという例もありますが、これは学習を進めていくことで時間を短縮することができるようになっていきます。
ひらがなとカタカナは似ている形がある一方で、似ていないものもあって、これが混乱の原因になることもあります。ひらがなは万葉仮名を書き崩していく中で誕生しました。万葉仮名は一つの音に漢字を当てはめたものです。ひらがなからカタカナが誕生したわけではなくて、カタカナは万葉仮名の一部を抜き出したものから誕生しました。誕生の経緯が異なっているので、ひらがなとカタカナが似ているものもあれば、まったく違っているものもあり、初めのうちは由来を知らないまま、覚えていくしかありません。そのことが困難な子どもが少なからずいるということを知っておくことが必要です。