おいしく感じないと栄養素の吸収が高まらないという前回の話を受けて、これだけ食べておけば大丈夫という食品や料理はあるのか、という話をします。1日に30食品を食べることがすすめられたことがありますが、これは1つの食品で1日に必要な栄養素を摂ることができないということを示しています。30食品の成否については別の機会にしますが、「これを食べれば1日に必要な栄養素の3分の1が摂れる」というキャッチフレーズで完全食のパスタやラーメンを売り出している会社があります。これを食べられる店舗がメディアでも複数回、紹介されています。
料理として目の前に出てくるものが3分の1の量ではなくて、麺に含まれているものの量で、その麺の材料を見ると小麦全粒粉、ビール酵母、小麦胚芽、チアシード、海藻パウダーなどが使われています。1日に必要な栄養素の量(日本人の食事摂取基準の数字)を示して、その3分の1の量を超えているという表が表示されています。これを見た人から、モリブデンが必要量の1000%(10倍)も含まれているので大丈夫かということを聞かれたことがありますが、モリブデンの1日の限度量は600μgで、1日に3食を食べたとしても200μgほどなので、その心配はないことになります。
パスタやラーメンは毎日、毎食、完全栄養摂取を目指して食べるには無理がありそうです。入院患者向けの濃厚流動食は毎食でも可能な内容となっています。その濃厚流動食のハイネックスRをアレンジしたのがバランス栄養食のカロリーメイトです。バランス栄養をうたう食品の中には、これでバランスをうたってよいのかと思われるものもあるのですが、さすが大塚製薬といえる栄養バランスとなっています。
これなら完全栄養食と呼んでよいのかというと、カロリーメイトでも不足しているものがあります。それは食物繊維です。カロリーメイトの開発に加わった大学病院の栄養科長であった管理栄養士の先生から、これを補うために飲む食物繊維のファイブミニが作られた、と聞いたことがあります。真偽のほどはわからないとしても、完全食、完全栄養食と語るときには、もっと考えるべきことがありそうです。