厚生労働省の「日本人の食事摂取基準2020年版」では、超高齢社会の対策として、複数の基準が変更となっています。高齢者の年齢は2015年版では65歳以上とされていましたが、2020年版では前期高齢者(65〜74歳)、後期高齢者(75歳以上)に区分されています。ナトリウムの過剰摂取は高血圧だけでなく、生活習慣病全般に影響してくることから、ナトリウムの目標量が引き下げられました。
これまでは生活習慣病を予防する観点から目標量が定められていましたが、超高齢社会では生活習慣病が重症化しないことを考えに入れて、コレステロール摂取量を新たに1日に200mg以下と定めています。コレステロールについては2015年版では上限値を廃止して、動脈硬化のリスクを高めないとされていましたが、だからといって多くの量を摂ってもよいというわけではありません。コレステロールは体内でも合成されていて、その合成量も人によって、条件によって異なっていることから目標値を定めるのは難しいことですが、脂質異常症や循環器疾患の予防のために過剰摂取をしないように、という考えが示されました。
高齢者のフレイル予防の観点から、高齢者のたんぱく質の目標量を見直して、1日に13%から15%へと他の年齢区分よりも引き上げられています。上限量は定められていないのですが、高齢者がたんぱく質を摂りすぎると腎機能への影響が出てくるので、今後の検討課題とされています。
炭水化物(糖質と食物繊維)の目標量は、糖質が重要なエネルギー源であることから、たんぱく質と脂質のエネルギー量を除いた残余として50〜65%の目標量が定められています。この中にはアルコールも含まれていて、飲酒量が多いときには糖質を減らす必要があるということです。
高齢者は骨粗鬆症のリスクが高まっていますが、ビタミンDは骨の強化に必要であることから、ビタミンDの目標量を18歳以上で8.5μgと定めると同時に、日光を浴びて体内でのビタミンD産生を増やすことも示しています。