日本酒とビールの“生”

「生」というと加熱をしていない食品の代名詞となっています。日本酒の“生酒”は、まったく加熱をしていないものですが、通常の日本酒は搾りを行った後に火入れ(加熱処理)を行い、貯蔵をして瓶詰めの前に火入れをします。つまり二重に加熱処理が行われているわけです。だから、常温で保存をすることができます。
このことも、よくメディアから質問、問い合わせが寄せられています。
生酒のほかに“生”がつく日本酒が2種類あります。それは“生貯蔵酒”と“生詰め酒”です。生貯蔵酒は搾りの後に加熱をせずに貯蔵をするもので、瓶詰めの前に火入れが行われます。生詰め酒は搾りの後に火入れをして、その後の貯蔵から瓶詰めの前には火入れをしないものです。ひやおろしという一夏寝かしたものがありますが、これは生詰めがされています。
“生”と名前がついても、これだけ違いがありますが、“生酒”と表示されていれば、本当の生であることに違いはないわけです。
ところが、ビールの場合は“生ビール”には2種類あって、その中身が異なっています。
昔からあった生ビールは店で出るジョッキの生ビールのことで、加熱をしていないので酵母が生きています。加熱をすると酵母は死んだ状態になるので、瓶ビールにしても栓をしておけば吹き出ることはありません。それに対して、店で飲む生ビールは栓をしたくらいでは圧力に負けてしまうため、アルミの容器で圧力をかけて保存しています。
これに対して、瓶ビールの生ビールは加熱をしていないのに、栓が吹き飛ぶようなことはありません。というのは、瓶入りの生ビールは酵母を濾過して取り除いています。だから、加熱しなくても吹き出すことはありません。酵母が入っているものも、取り除かれたものの加熱をしていないことが同じなので両方とも“生ビール”となっているのです。
ちなみに、この取り除かれた酵母は、健康食品のビール酵母の材料となっています。