夜間頻尿は睡眠中に尿意を感じて目覚めてトイレに行くことをいいます。膀胱に多くの尿が溜まっていないのに尿意だけを感じているわけではなくて、この状態の人は実際に膀胱の中には尿が溜まっています。寝る前にトイレに行って、膀胱の中を空っぽにしておいても、寝る前に水分を摂らないようにしても、寝ている間に膀胱の中に尿が溜まっていきます。
これまで夜間頻尿というと、男性の場合には前立腺の肥大が原因だと言われてきました。年齢を重ねてきて前立腺が肥大すると尿道を圧迫して、膀胱に尿が溜まっているのに充分に出切れないために、それが寝ている間に出てきてしまう、ということが考えられていました。しかし、膀胱の中に溜まっていないことを機器での測定で確認してから寝ていても、やはり夜間頻尿が起こることが確認されました。この尿は、どこから来ているのかが研究対象となり、体内の水分量を調べたところ、ふくらはぎに高齢者は水分が溜まっていて、これが寝ているときに血流に乗って腎臓を経由して膀胱に向かっていることがわかりました。
ふくらはぎは第二の心臓とも呼ばれています。心臓から送り出された血液は重力によって足にはスムーズに運ばれるものの、足まで下がった血液は重力に逆らって上がらないといけないために、心臓の圧力だけでは充分に押し上げることができません。そのために血液とともに心臓に向かって運ばれていかなければならない水分が、ふくらはぎに溜まったままになります。そこで血流をよくして、余分な水分が溜まらないようにするためには、ふくらはぎがよく動くことが必要になります。
日本泌尿器科学会は「夜間頻尿診療ガイドライン」として発表して、この仕組みとともに、改善法を紹介しています。足を上にして横になる、圧迫力があるソックスを履くといった方法が語られていますが、ふくらはぎのポンピング作用によって血液を押し上げていくということで最も簡単で効果があるのは歩くことです。寝る前に歩くというのではなくて、昼間の時間に歩くようにして、ふくらはぎに溜まる水分を減らしておくと、目覚めているときに尿として排出される分が増えて、夜間の睡眠中にふくらはぎから血液中に入る水分を減らせるので、夜間頻尿も改善できるようになるということです。