歩幅を広げると認知症が予防できるのか

認知症予防のためのウォーキングとして「プラス10」が推奨されています。これは毎日10分間のウォーキングをプラスするものですが、ただ10分間歩けばよいというものではなくて、10分間の早歩きがすすめられています。早歩きをするときには、歩幅を広くするのが普通です。少なくとも歩幅を狭くする歩き方では早く歩けません。歩幅を狭くして回転を早くするチョコチョコで早歩きができる人もいますが、この歩き方では10分間も継続させることはできません。
歩幅を広くするといっても、あまりに広げすぎると歩きにくくなります。理想的な歩幅として示されているのは65.1cm以上です。小数点以下は必要ないのではないかとの意見は当然でしょうが、この数字は国立環境研究所の研究者によって発見されています。研究されたのは高齢者の身体機能の低下と歩幅の関係で、歩幅が狭い(58.2cm未満)、普通(58.2〜65.1cm未満)、歩幅が広い(65.1cm以上)のグループに分けて、認知機能低下リスクを調査したところ、歩幅が広いグループに比べて歩幅が狭いグループは認知症リスクが3.39倍になっていたとのことです。
これは短期間の調査ですが、別の12年間の追跡調査でも、歩幅が狭いグループは認知症リスクが3.3倍と、同じような傾向が見られています。歩幅を広げて歩くと、筋肉を大きく動かし、全身の血流がよくなり、脳の血流もよくなります。脳の血流促進による認知症予防以外は、まだ解明されていないところはあるのですが、元気に歩けるというのは脳だけに限らず、全身の健康にもプラスに働くことは充分に理解できます。
調査をするときに歩幅の普通を58.2〜65.1cm未満としたことから65.1cm以上がよいということになったので、実際には65cm前後の歩幅でも大丈夫ということになりそうです。これはどれくらいの幅なのかというと、横断歩道の白線が目安となります。白線の幅が45cm、白線が描かれていないところが45cmとなっています。足の長さが25cmの人は、白線の手前に足先を当てて白線を跨ぐようにすると1歩が70cmになります。足の長さが20cmの人の場合は65cmです。
無理のない歩幅は、身長によっても異なってきますが、無理がないところで、できるだけ歩幅を広げることを意識して歩くと、認知機能を高めることができるというわけです。

プラス10資料