活性酸素の基礎知識5 コレステロールの酸化で血管が老化

がんに次いで死亡数が多いのは心疾患(心臓病)と脳血管疾患で、この二つを合わせるとがんに迫る勢いとなっています。実際の死亡ランキングでは第3位は肺炎です。これは高齢化が影響しています。心疾患と脳血管疾患は動脈硬化によって引き起こされるものなので、日本人の死因の第2位は動脈硬化といえるかもしれません。

動脈硬化は加齢によって徐々に起こっていきます。その加齢以上に早く進むのが病的な動脈硬化です。動脈硬化は、動脈の血管壁が硬くなり、弾力性が失われていくとともに、血管の内径が狭くなって血流が低下していきます。

その大きな原因としてあげられているのは、血液中のコレステロールが多くなりすぎる脂質異常症(高LDLコレステロール血症)です。血液中のLDLコレステロールが過剰になると、血管壁に付着しやすくなり、付着した部分の血管壁の細胞は新陳代謝が悪くなり、細胞の再生が遅くなって、血管が徐々に硬くなっていきます。

これと同時に動脈硬化を進める原因となっているのが活性酸素です。

活性酸素は血液中のLDLコレステロール(低比重リポたんぱく)を酸化させます。LDLコレステロールは、細胞膜の材料となり、脂肪を分解する胆汁酸やホルモンの原料となるコレステロールを全身に運ぶトラックの役割をしていて、悪玉コレステロールとも呼ばれています。LDLコレステロールが増えると動脈硬化のリスクが高まることから、悪玉とされているのです。

これに対して血管内で余分となったコレステロールを集める役割をするのが善玉コレステロールとも呼ばれるHDLコレステロール(高比重リポたんぱく)です。血液中のコレステロールを減らすことから善玉とされているわけです。

コレステロールは健康維持に欠かせないものであり、それを運ぶLDLコレステロールも必要なものなので、血液中にLDLコレステロールが多くなっても白血球の一種であるマクロファージが取り込んで処理するようなことはありません。

ところが、LDLコレステロールが活性酸素によって酸化すると変化した酸化コレステロールとなり、これをマクロファージは異物と認識します。そのため、マクロファージは内部に取り込んで処理する貪食を始めます。マクロファージは限界まで酸化コレステロールを貪食すると活動を止めて、血管の内壁に潜り込みます。これが続くと、だんだんと血管壁が硬くなり、内側に盛り上がって血管の内径が狭くなっていきます。これが動脈硬化の大きな原因であり、血管が狭くなって血流が低下するので、全身に影響が出るようになります。

この狭くなり、硬くなった状態で血栓ができると、血管が詰まりやすくなります。血管が詰まると、そこから先には血液が送られなくなって、先の細胞が死んでしまったり、臓器の機能が大きく低下することになります。これが心筋梗塞や脳梗塞の原因です。血栓が詰まったところが脳や心臓の血管であれば、死にもつながりかねません。また、血栓が詰まったところに強い圧力がかかると、血管が破れて大出血が起こることもあります。

動脈硬化はLDLコレステロールが血液中に多くなりすぎることだけではなく、活性酸素によってコレステロールが酸化することが重要な問題であり、活性酸素が体内で多く発生しないようにすることが血管を守ることになる、ということです。

また、活性酸素は血液中に多くあることから、活性酸素そのものによっても血管は傷つけられ、弾力性が失われていきます。これだけでも血流が悪くなってしまいますが、血液中の中性脂肪も活性酸素によって酸化することで血液がベタつくようになり、ますます血流が悪くなっていきます。酸化した中性脂肪はアテロームと呼ばれる粥状の脂肪となって、血管壁に付着することで血管壁の細胞を劣化させていきます。これも動脈硬化の原因の一つとなっています。

血流が低下することは、免疫にも大きな影響を与えます。

がんを抑える免疫細胞の白血球とリンパ球は血液中を流れていて、血流が悪くなると必要なところに駆けつけるのが遅くなります。道路が渋滞していたら、消防車の到着が遅れて、ボヤで消せるはずの火事が全焼にもなりまねません。それと同じようなことが起こって、がん細胞の増殖が進んでいくことになります。血液中にブドウ糖や中性脂肪が増えすぎると血管内が混雑した状態になります。また、ブドウ糖も中性脂肪も血液中で多くなると赤血球をくっつける作用があり、ますます渋滞がひどくなって、免疫が低下していくことになります。

活性酸素を消し去ることは、こういったことを解決するので、健康の維持には欠かせないことがわかるはずです。