痛みvs.傷み

テレビ番組のテロップは耳で聞くだけではわかりにくい言葉や用語を確認するためには有効なものですが、同音意義語が変換ミス、変換する人の勘違いや知識不足のために表示されることがあります。そのために見ている人の知識によっては、勘違いや間違いが起こることにもなります。

テレビのテロップで見かけるだけでなく、ネット情報、雑誌や新聞のように校閲がしっかりとしているところであっても、間違いになりかねない同音意義語として目立っているのが「痛み」と「傷み」です。ともに「いたみ」と読まれます。

「痛み」は疼痛を指していて、代表的な辞典では「ずきずき痛むこと、うずくこと、その痛み」と書かれています。他の辞書でも同じような表現がされています。

「傷み」のほうは傷、損傷のことで、そのために痛みが生じる場合も生じない場合も傷みが使われるのは通常です。

そのような使い分けであるのに、傷ついたことを示す「いたみ」の表現に「痛み」と書かれていると、かなり痛い結果になったのだろうかと想像してしまいます。痛いというのは、物理的な痛さだけでなく、精神的な痛さも示すようになりつつあります。

野球の試合で「デッドボールを当てられたバッターよりもデットボールを投げたピッチャーのほうが痛かった」という解説がされることもあります。当てられた痛みよりも当てたほうが痛いというのは、押し出しになって負けたという結果などを指しています。

これは「痛み」というよりも精神的な「傷み」のほうが相応しい感じで、そう考えると、あえて「傷み」と表現したのではないかと深読みすることもあります。その場合には“傷み”とカッコ付きで表現すべきというのが文章の基本とされています。しかし、「“  ”」の使い方について、よくわかっていない人が最終チェックをしていることもあって、見る側の知識が試されることにもなります。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕