発達栄養学5 エネルギー代謝を理解するためのビタミンB群の基礎知識

全身の細胞のミトコンドリアの中のTCA回路でエネルギーを作り出すために必要なビタミンB群のビタミンB₁、ビタミンB₂、ビタミンB₆、ビタミンB₁₂には、それぞれ特性があり、一つの食品だけを食べれば摂取できるというものではありません。また、ビタミンB群は水溶性の性質があるため、細胞内で長く保持されず、毎日食事から摂る必要があります。
ビタミンB₁は、チアミンとも呼ばれています。糖質のエネルギー代謝に必要な補酵素としての働きがあり、疲労回復のビタミンとも呼ばれます。糖質からエネルギーを作り出す過程でできる乳酸は肝臓でブドウ糖に変換されてエネルギーとなりますが、ビタミンB₁が不足するとブドウ糖への転換が遅れ、乳酸が疲労物質として蓄積され、筋肉疲労や全身の倦怠などを引き起こすことになります。脳の唯一のエネルギー源でもあるブドウ糖を、エネルギーとして利用するときにビタミンB₁が必要で、不足すると脳の低血糖状態を引き起こし、中枢神経や末梢神経の働きが低下します。糖分や清涼飲料水を多く飲むと、急激な糖質代謝のためにビタミンB₁が不足しやすくなります。食品では、豚肉、ウナギ、カツオ、レバー、大豆、ニンニクなどに多く含まれます。
ビタミンB₂は、リボフラビンとも呼ばれています。糖質、脂質、たんぱく質のエネルギー代謝の補酵素であり、特に脂質の分解・合成に深く関わっているため、不足すると血液中の中性脂肪や体脂肪の増加を引き起こします。成長の促進、細胞の再生などの作用があり、美容のビタミンとも呼ばれます。ビタミンB₂が欠乏すると口内炎、舌炎症、口唇炎、角膜炎などが起こります。脂質の摂取が多くなるとビタミンB₂の必要量が増え、体内で不足しやすくなります。食品では、ウナギ、サンマ、レバー、大豆、牛乳などに多く含まれます。
ビタミンB₆は、ピリドキシンとも呼ばれています。糖質、脂質、たんぱく質のエネルギー代謝の補酵素で、特にたんぱく質の分解・合成に深く関わっているため、不足すると貧血や肌荒れ、湿疹、神経系の異常などを引き起こします。腸内で腸内細菌によって合成されます。食品では魚や肉に多く含まれますが、調理したり、加工食品にすると失われやすくなっています。
ビタミンB₁₂は、コバラミンとも呼ばれています。脂質のエネルギー代謝の補酵素で、中枢神経や脳の機能を維持する作用があります。造血作用に関わり、葉酸とともに骨髄で正常な赤血球を作り出すのに欠かせません。腸内で腸内細菌によって合成されます。食品では、レバー、肉、魚介類などの動物性食品に多く含まれます。動物性食品を摂らないと不足して、エネルギー代謝に悪影響が出ることにもなります。