神経伝達物質のセロトニンは必須アミノ酸のトリプトファンを材料にして体内で合成されると前回説明しました。セロトニンの合成は脳内で行われていますが、それは全体量の10%ほどでしかありません。これ以外は別のところで合成されて、それが脳に届けられています。その合成場所は腸内です。
腸の状態をよくして、善玉菌が増えやすく、働きやすい状態にして腸内環境を整えることはセロトニンの合成にも役立つことになります。しかし、発達障害では自律神経の副交感神経の働きが低下しやすくなっています。
副交感神経は胃での消化、小腸の吸収、蠕動運動を高める作用があるので、腸内環境が乱れやすくなっています。そのために、トリプトファンが吸収されにくいということにもつながっていきます。
トリプトファンの合成にはビタミンB₆が必要です。ビタミンB₆は赤身の魚、肉類に多く、植物性食品ではバナナやパプリカ、さつまいも、玄米などに多く含まれています。これらの食品についても副交感神経の働きが低下していると吸収されにくくなります。
セロトニンは、ストレスや睡眠不足、昼夜の逆転などの不規則な生活によっても不足するようになります。セロトニンが不足するとストレスが高まっていくことから、ストレス状態は悪循環を引き起こすことにもつながります。
セロトニンを必須アミノ酸から合成する能力は20歳代前半のピーク期間に向けて、徐々に増えていきます。子どもはセロトニンの合成量が少なく、それが発達障害児の状態に関係があることが指摘されています。
それだけに、セロトニン不足を解消して、改善に結びつけていくには、ある程度の期間がかかることになります。