発達栄養122 咀嚼が影響する嗅覚過敏

五感の中で、味覚と並んで食べることに影響を与えるのは嗅覚です。というのは、嗅覚があって初めて味覚は完成するからです。味覚が鋭くても、嗅覚なしには味がよくわからないということが起こります。

風邪をひいて鼻が詰まった状態では味がよくわからなくなるというのは多くの人が経験していることです。また、鼻をつまんで、目隠しをして食べるとスイカもメロンもキュウリも同じような味にしか感じないということもあります。

発達障害では味覚過敏と味覚鈍麻があり、味覚鈍麻と思われていたのが、実は嗅覚鈍麻が原因であったということもあることです。口から食べたものは舌の味蕾で味を判別しますが、その情報は嗅覚から得た情報と合わさって脳に感覚情報として伝えられます。

嗅覚の情報なしには、味覚情報が正確には伝わらないということです。同じ味のものでも温めて食べると味がわかりやすいというのは、温度によって香りが立ち、これを嗅覚で強く感じているということがわかっています。

味覚過敏の子どもの場合には、温かいものを食べると味覚が強く刺激されて、食べにくくなるということが起こります。咀嚼をすると食品が細かく砕かれることによって香りの成分が多く立ち上ることになって、嗅覚が強く刺激されて、より嗅覚過敏が強くなることが起こりやすくなります。

咀嚼することは消化・吸収のためにも、広く健康のためにはよいことではあっても、嗅覚過敏の子どもに噛むことをすすめるときには、嗅覚過敏のこと、味覚過敏と重なって嗅覚がより鋭く現れるようになることも知っておいてほしいのです。そして、子どもへの指導には細心の注意を払ってほしいのです。