糖尿病は治るのか治らないのか

糖尿病ほど簡単なものはない、と言われています。高血圧は血圧が高まりすぎる理由が明確でないものがあり、高まる原因が複数あることから下げ方も決定的なものはありません。それに比べると糖尿病は診断基準の血糖値が高まる理由がわかっていて、下げるための食事療法、運動療法、効果的な医薬品も明らかになっています。それなのに患者数が増え続けているのは、食事も運動も継続するのが大変で、医薬品は食事と運動が的確でないと効きにくく、治りにくくなっているからです。
糖尿病と診断されるのは空腹時の血糖値が126mg/dl以上、食後2時間の血糖値が200mg/dl以上となったときであるので、これを上回っていた人が下回ることになれば糖尿病ではないことになります。では、これで治ったのかというと、そうは言い難い状況があります。糖尿病になるのは血液中のブドウ糖(これを血糖と言います)を細胞に取り込んでエネルギーにするために必要なインスリンが膵臓から分泌されにくくなっているか、インスリンが分泌されているものの細胞に取り込むための働きがよくないか、というのが原因となっています。その原因が解決されていなければ、血液検査をしたときに血糖値が診断基準よりも下回っていても治ったとは言えないはずです。
糖尿病は治りにくいといっても、血糖値が極めて高い状態が続いていなければ、そして合併症が起こっていなければ、糖尿病でないのと同じように生活して一生涯を無事に過ごすことができます。「糖尿病で死ぬことはない」と言われる要因となっているわけですが、糖尿病の三大合併症の一つの腎症は死につながるものです。二つ目の網膜症は失明の危険があります。三つ目の神経障害は傷があっても気づきにくいために足が壊死を起こして切断することもあります。
合併症さえ起こらなければ病気とは言えないという考えもあり、血糖値が診断基準を超えて糖尿病域になっていても、これを下げる努力を続けることで“糖尿病を病気にしない”ことはできるのです。