認知症の画期的な医薬品が開発されたとの報道を、希望を持って見た人がいる一方で、残念な気持ちで見た人もいました。9月は世界アルツハイマー月間で、そのタイミングでの発表でした。
これまでの認知症に使われる医薬品は、認知症が進行するのを遅くさせるもので、悪化する前に家族などが先々の準備をする期間を確保するのが主な目的とされていました。
それに対して、今回発表された医薬品は、アルツハイマー型認知症の特徴とされるアミロイドβというタンパク質が脳に蓄積されていくのを抑制して、認知機能の低下を抑え、認知症の進行を緩やかにすると初めての医薬品です。
確かに、これまでにない原因にアプローチする医薬品ではあるものの、その登場によって65歳以上の5人に1人が認知症とされる状況を大きく転じることができるのかというと、それはまだ期待のしすぎと言えます。
認知症は年齢が進むほど発症率が増え、65歳以上といっても65〜69歳では2%にも達していません。男女でも違いがあって、男性は80〜84歳は約20%と、5人に1人の割合の平均年齢となっています。
女性は長生きなので、発症が遅いことが期待されるところですが、実際には80〜84歳は約25%と、4人の1人の割合になっています。認知症は進むことがあっても戻らないとされているだけに、女性の場合には家族に大きな負担をかけることが予測されます。
認知症にならないことは大切なことで、そのための生活習慣(食事、運動、コミュニケーションなど)は必要なことです。認知症にならないことに力を注いで、さらに医薬品の有効性を求めることも大切であると考えます。
しかし、認知症は加齢によって進み、高齢者の割合が増えるほど患者も増加していくことは避けられないことだけに、本来の目指すべき道は、認知症になっても本人にも家族にも大きな負担がかからないケア社会を構築することではないかと考えています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕