エネルギー代謝92 エネルギー代謝のための栄養素

日本の栄養学は終戦後の食糧難からの脱却を目指した“食物栄養学”から本格的に始まりました。必要なエネルギー源が補えない状態を改善するために、食物の研究が行われ、食物を大きく育てること、食物も栄養素を充分に吸収することを目指した摂取・吸収の研究が盛んに行われました。

経済的に回復してくると、今度は食べ過ぎによる弊害が叫ばれるようになり、栄養の不足から過剰摂取対策への研究が移ってきました。その頃から言われるようになったのが“人間栄養学”です。

過剰摂取による肥満症、高血圧症、糖尿病、高脂血症をターゲットとしたエネルギーコントロール食が研究の中心になりました。高脂血症は当時の呼び方で、今では脂質異常症と呼ばれています。

脂質の中でも善玉コレステロールとも呼ばれるHDL(高比重リポタンパク)は多いほうが動脈硬化を抑制できることから、高脂血症という呼び名が相応しくない状態となったからです。脂質異常症は高中性脂肪血症、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症を指します。

肥満症、高血圧症、糖尿病、脂質異常症は、エネルギー源(糖質、脂質、たんぱく質)の摂取が多くなりすぎることが要因となっています。摂取量を減らすのがエネルギーコントロール食ですが、せっかく摂取したエネルギー源を効果的にエネルギー化して、発生したエネルギーを使って生活習慣病の予防と改善に向けていくことが重要になります。

そのためには、エネルギー代謝に必要な水溶性ビタミンを充分に摂取することと同時に、細胞の中のエネルギー産生器官であるミトコンドリアでは酸素が充分にあることで代謝が進んでいきます。

酸素の充分な摂取は栄養学の範疇ではないものの、エネルギー代謝の促進という観点では食事と同時に運動も必要になってくるということです。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)