握力は加齢を推定する数値として活用されています。握力は物を握りしめる力のことで、前腕屈筋群と手筋という一部の筋肉の力を指しています。しかし、全身の筋肉量の関連研究から、大腿四頭筋力、背筋力と握力との相関性が報告されています。大腿四頭筋は大腿骨につながる太腿の筋肉、背筋は背中の筋肉で、身体を支える重要な筋肉となっています。
また、握力は持久力、生活活動に必要な体力測定の項目とも相関性が認められています。握力の低下は全身の筋力の低下、筋肉量の低下を示す指標となっていて、加齢による減少の割合も明らかにされています。
握力は20歳を100%とすると60歳では85%、70歳では75%に低下していきます。加齢につれて低下するものの、他の体力要素に比べると最も低下しにくい指標となっています。垂直跳びは60歳では60%、閉眼片足立ちは30%にも低下しています。
握力のピークは男性では30〜34歳で47kgほどですが、60歳では42kgほどになります。女性のピークは35〜39歳で29kgほどですが、60歳では26kgほどに低下します。
握力と認知機能の関連性も研究が進められていて、握力が5kg低下するごとに認知症発症リスクが男性では1.16倍、女性では1.14倍に高まります。アルツハイマー病のリスクは男性が1.11倍、女性が1.13倍、血管性認知症のリスクは男性が1.23倍、女性が1.20倍との報告もあります。
握力は指で握る力、前腕の引く力を鍛えることで高めていくことができます。手と腕の筋肉を強化するには、全身の活動も大切になります。日常的な活動量を増やすと同時に、握ることを習慣化することによって、全身の筋肉を強化して、筋肉による代謝を高めていくことができます。
筋肉は1日に消費されるエネルギー量の20%以上を占めているので、生活習慣病に結びつきやすい血液中のブドウ糖、中性脂肪などをエネルギー化させて、リスクを低下させることにもつながっていくということです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕