運動によるエネルギー消費は少ないのか

脂肪は細胞内で燃焼しているわけではなく、TCA回路でのエネルギー代謝によって二酸化炭素と代謝水が発生する分以外はリン酸が移動するだけということが理解できると、湧いてくる疑問があります。それは運動をしても体脂肪の減少は少ないのではないか、ということです。ダイエットのために運動をしても、なかなか体脂肪が減らないのは、脂肪がそのままエネルギーとなって減少しているわけではないからということですが、そうなると食事の量を減らしたほうがやせられるのではないかと考えがちです。
運動を継続することと食事の量を減らすことを比較すると、食事を減らしたほうが体重は減らしやすいかもしれません。しかし、食事の量を減らすと、代謝に必要な成分も不足することになります。食品の栄養価が低下している現状を考えると、食事の量を減らすことには抵抗感があります。
代謝にはビタミンB群をはじめとした水溶性ビタミンが欠かせません。活性酸素が体内で多く発生することは代謝の低下につながりますが、活性酸素を消去する作用があるビタミンA、ビタミンC、ビタミンEのうちビタミンAとビタミンEは脂肪に溶けてから吸収される脂溶性ビタミンで、これらのビタミンを摂取することも代謝促進のためには重要になっています。
運動をすることは糖質や脂質をエネルギー源として活用するだけではなく、運動をすることによって筋肉の量を増やすことができます。筋肉は基礎代謝のうち35〜38%を占めていることから、運動をして筋肉が増えることは代謝量の増加にもつながるわけです。筋肉には無酸素運動をすることで強化される速筋と有酸素運動によって強化される遅筋に大きく分けられていますが、脂肪の代謝が進むのは遅筋であり、遅筋は有酸素運動を継続することによって増やしていくことができます。
遅筋は赤い色をしていることから赤筋とも呼ばれますが、これは酸素を多く取り込んでエネルギーを作り出すためにミトコンドリアとミオグロビン(筋肉中の色素タンパク質)が多いためです。ミトコンドリアが少ない速筋は白い色となっていて白筋と呼ばれていますが、主に無酸素運動に使われることからミトコンドリアを多く必要しないことが関係しています。
運動することによって筋肉細胞の中での代謝が促進され、多くのエネルギーを作り出すことができるようになります。多くのエネルギーを作り出すには、エネルギー源になる糖質、脂質、たんぱく質を充分に摂り、運動などで体を動かすことが大切になってきます。
多くのエンルギーを作り出すためにはミトコンドリアの数が多いことも有利になります。細胞の中のミトコンドリアの数は部位によって差があるのですが、必要に応じて増えていくという特徴があります。運動をして筋肉量が増えると、それに比例してミトコンドリアの数も増えていくようになるのですが、代謝が盛んになることによって現在の数では必要とするエネルギーが作り出せなくなると、数を増やして対応するようになっているというわけです。
運動をやり慣れていない人は体力が続かなくなりますが、運動を続けていると徐々に体力が高まり、以前よりも苦しさを感じずに運動をすることができるようになってきます。これは運動によってミトコンドリアが増えたために代謝が高まったことを示しているということです。