食べるために働くのか、働くために食べるのか

グルメの人は健康よりも美味しさのほうが重要なようで、とにかく美味しいものを食べようとして、そのために頑張って働いているということを公言している人がいます。美味しいものを食べることはモチベーションを高めることで、仕事でも勉強でもやる気が起こります。もっと頑張ろうという気持ちになります。そういう前向きな気持ちで食事をすることは、食べたものを身体に取り込むためにも必要で、美味しいと感じて食べること、楽しい気持ちで食べることは栄養素の吸収をよくすることも確認されています。
「生きるために食べるべきで、食べるために生きるべきではない」という言葉を遺したのは古代ギリシャの哲学者であるソクラテスですが、“生きる”ということと“働く”ということがイコールにとらえられているようです。ソクラテスの考えを引用するなら、働くために食べるべきだということになります。
働くために食べるということを文化的な面から考えると、働くために必要な栄養素が摂れれば美味しさを追求するようなことはなくてもよいと聞こえてしまいます。「文化性のない食事はエサである」ということを病院給食の世界で発言して驚かせたのは当時の日本栄養士会の山本辰芳理事長でした。美味しさを感じて食べると食欲が高まり、栄養素の吸収がよいということは、その栄養が体内で効率よく使われることも期待されます。
ソクラテスは「人生を楽しんでいない人は食べるために生き、楽しんでいる人は生きるために食べる」ということも語っています。重要なことは、人生を楽しんでいるかどうかであって、人生を楽しめていないのに仕事のために必要だからといって食べている、栄養補給のためには美味しいもののほうが効果はあるからといってグルメを目指すといのは、どうなのか、ということです。どうも簡単には結論が出ないことのようなので、引き続き考察をしていくことにします。