発達障害の感覚過敏だけが偏食の理由ではない

発達障害の自閉症スペクトラム障害で起こりやすい極端な偏食につながる五感の感覚過敏について2回にわたって紹介してきましたが、味覚、嗅覚、視覚、聴覚、触覚とは関係がないところでもの極端な偏食を起こしている例があります。
牛乳にまつわることが多く、業界でも牛乳を多く扱う食事の世界でも、牛乳を飲めない子どもへの対応に苦慮しています。というのは、牛乳は子どもの成長に欠かせないものとされていて、学校給食では当たり前に出されているからです。栄養面だけでなく、他の子どもが普通に飲んでいるのに、その子どもだけが飲めないということだけでも仲間に入れてもらえないようなことにもなります。
味覚過敏で牛乳が飲めないという理由の一つに、濃厚さがあります。これを特有のとろみと感じている子どももいて、舌触り、喉ごしに不快感を感じています。この対策として炭酸で割るという方法もあるのですが、これも苦手だということも少なくありません、味が嫌だというなら、チョコレート味やイチゴ味にしたり、料理に使って牛乳を感じなくする方法もあるのですが、牛乳に過敏になっていると、それが少しでも感じたら飲めない、食べられないということもあります。
以前に紙パックの牛乳でストローを刺したところ、飲む前にストローから牛乳が出てきて、気持ち悪かったということで手の感触のほうで飲めない、その記憶があるから飲めないということも起こります。幼いころに牛が大きくて恐怖を感じた、牛の臭いが気になって嫌いになってから牛乳が飲めなくなったという子どももいます。他の子どもが牛乳を吐いたことがあり、それから飲めなくなったという例や、それを目撃したわけではなくて話に聞いただけで怖くて飲めないということもあります。
それなのに牛乳は健康によいということで、無理に飲ませようとしたことから、親のことが嫌いになって、それから飲めなくなったということまであります。以前に感覚過敏で牛乳が飲めない子どもにとっては「牛乳はバリウムを飲まされているようなもの」ということを紹介しましたが、バリウムを強要されたら、それは飲ませようとする人のことを嫌いになるのは当然のことです。それを知らないうちに料理に入れられたことで、もっと嫌いになってしまったという例もあります。
このほかに、冷めたご飯が食べられない、餅は喉に詰まると思って食べられない、ということもあります。家では飲食できたものでも、銘柄が違うと食べられないという子どどもいます。家で使っている食器でないと食べられないという例や、不衛生な台所で作ったものは食べられないということもあります。以前は学校給食は食べられたのに、給食室(厨房)を見学したあとから給食が食べられなくなったという子どももいます。作っている人がわかっているものは拒否反応が起こるということから、加工食品しか食べられないということまであって、発達障害の極端な偏食の対応は大変な手間と労力が必要になってくるのです。