食器の洗い方を見れば衛生状態がわかる

家庭用の食器洗浄機は、食器を詰めて洗っても汚れが落ち、除菌もされます。衛生というと殺菌という言葉が出てきますが、除菌は菌を殺すのではなく、あくまで取り除くだけです。除菌された菌が台所から、どこに行くのかという疑問も出てくるところですが、家庭用食器洗浄機なら流し台から菌を流してお仕舞いということでも大丈夫です。
これに対して業務用の食器洗浄機は取り扱いが家庭用とはまったく異なり、同じような洗い方をしているようでも、中で起こっていることも、求められる衛生レベルも異なっています。家庭用食器洗浄機は付着している汚れも菌も家庭レベルでしかありません。業務用の世界になると、どんな菌を持っている人が食べているかわからず、厨房内で菌が繁殖することがあり、通常の除菌剤では対応できない菌も存在しています。そのために完全に除菌・洗浄するための規格が定められています。
日本では食器洗浄機と呼ばれていますが、英語ではディッシュウォッシャー(dish washer)といい、皿を洗うことを基本としています。日本のように丼や茶碗蒸しの器といった深い器を洗うことを前提として開発されたものではありません。皿は斜めに立てかけて、そこに上からシャワー状に勢いよく洗浄水が流れることで汚れが落とされていきます。これはウォーターナイフ(water knife)といって、ナイフのように削ぎ落としていきます。そのためには洗浄水の勢い、当たる角度と範囲が重要になります。
業務用の食器洗浄機はドアタイプとコンベアタイプに大別されます。コンベアタイプはベルトコンベア式で次々に食器を洗っていくもので、給食施設などの大量調理をする施設で使われています。ドアタイプはラウンド(回転)式とも呼ばれ、洗浄水を吹き出すノズルが回転して固定された食器を洗っていくものです。レストランや食堂など店舗の一角に置いてあって、客が目にするのは、こちらのほうです。
ドアタイプでもウォーターナイフ効果を得るためには、洗浄水が的確に当たるように食器と食器の間に空間が必要になります。そのため、1回に洗える食器の数が限られてきます。ところが、店舗で目にすることが食器洗浄機では隙間がないほど詰め込んだり、中には食器を重ねているところまで目にします。食器洗浄機は初めに水で予備洗浄をした後に洗剤の入った洗浄水で洗い、その後にすすぎ水で洗剤を洗い流します。これは洗濯と同じ手順です。
食器を詰め込むとウォーターナイフ効果で洗うことができなくなるだけでなく、すすぎ水が勢いよく当たらなくなるので洗剤が残ってしまう可能性が高くなります。そんな食器で食べたいとは思わないのは当然のことで、店の衛生状態は、こんなところを見るだけでもチェックできます。