R‐αリポ酸はα‐リポ酸とは違うものなのか

「L‐カルニチンは胃薬の成分なんですか」との質問がありました。L‐カルニチンは医薬品の成分であったものが食品にも使えるようになり、サプリメントの有効成分として使われている、という話は何度かしてきました。どんな医薬品の成分なのか気になる人も多くて、それについては以前に紹介していますが、胃薬なのかという質問が来ることは想定していませんでした。なぜ胃薬という発想になったのかというと、DL‐カルニチンが胃薬の成分に使われているからです。しかし、L‐カルニチンとDL‐カルニチンは違う成分です。
もう一つ違うカルニチンがあって、それはD‐カルニチンといいます。LとDが混在していて、なんともややこしいところですが、D‐カルニチンはL‐カルニチンと構成される成分は同じであっても、構造が左右逆になっています。逆の構造のものは体内では使われないので、D‐カルニチンはカルニチンの活性がありません。つまり、L‐カルニチンに特有の細胞のミトコンドリアの中に脂肪酸を取り込む働きがなくて、代謝を高めることもないということです。
体内で合成されるカルニチンと同じであること、活性があるカルニチンであることを示すために、わざわざL‐カルニチンと表記しているのです。
L‐カルニチンと同様に医薬品の成分であったものが食品として使うことが許可されたものにα‐リポ酸があります。カルニチンのLが頭につくように、リポ酸にもαがついているので同じような意味でαが使われているとも思われがちですが、「α‐リポ酸」で一つの言葉です。このα‐リポ酸にもカルニチンと同様に逆の構造のものがあって、一つはR‐αリポ酸、もう一つはS‐αリポ酸です。体内で合成されているのはR‐αリポ酸で、天然型となっています。これに対してS‐αリポ酸のほうは非天然型と呼ばれていますが、要は人工型です。本来ならサプリメントに使用されるものはR‐αリポ酸と記載しなければならないところですが、ほとんどは「α‐リポ酸」となっています。
というのは、多くのサプリメントではR‐αリポ酸とS‐αリポ酸が組み合わされて使われているからです。逆の構造のものを等量、つまり同じ量が使われたものはラセミ体と呼ばれていますが、非天然型は体内で合成されているものとは違うタイプなので、吸収されても使われることがありません。なぜ違うタイプのものを半分も使っているのかというと、天然型のR‐αリポ酸は胃液で分解されるからです。分解されたら、吸収されても有効成分とはなりません。しかし、わざわざ使っているのはR‐αリポ酸とS‐αリポ酸を組み合わせると分解されにくくなるからです。分解されにくくなるだけで、分解されないわけではありません。
R‐αリポ酸だけを使うと分解される、R‐αリポ酸とS‐αリポ酸を組み合わせても分解されないわけではないとなると、どうすればよいかということですが、それを解決したのがシクロデキストリン(環状オリゴ糖)です。輪になった中にR‐αリポ酸が入ると、分解されなくなります。これはカプセルのようなものですが、カプセルと違うのは輪の中に入っているために腸壁に密着すると内部に取り込まれるということです。これによって分解されずに、効率よく取り込むことが可能になったのです。
L‐カルニチン、α‐リポ酸、シクロデキストリンについては、このサイトの「サプリメント事典」を参照してください。