発達栄養90 糖質制限でもケトン体があれば大丈夫!?

脳に選択的に成分を取り込むための血液脳関門について前回説明したときに、取り込むものとしてケトン体を取り上げました。ケトン体は脂肪から合成されるもので、血液中のブドウ糖が大きく減って、血糖値が極端に低下したときに肝臓で作り出されます。ケトン体はアセトン、アセト酢酸、β−ヒドロキシ酪酸をまとめたものです。

ケトン体は血液脳関門を通過してブドウ糖の代わりにエネルギー源として使われます。そのことから、糖質を制限してブドウ糖を摂らなくても、脳の機能の低下を抑えることができると考えられています。しかし、それは成長期の子どもだけでなく、どの時期においても頼ってよいものだとは言えません。

ケトン体は肝臓の中で脂肪が合成されたり、分解されたりするときに作り出される中間代謝物です。血液中のブドウ糖が極端に減るようなことがあると、脳の唯一のエネルギー源であるブドウ糖の供給が減ることになり、脳の機能が低下するので、その代わりになるものを作り出して、生命維持をする仕組みが身体には備わっているのです。

脂肪細胞に蓄積されている中性脂肪は、そのままではエネルギー源となりません。中性脂肪はグリセライドと脂肪酸3個が結びついた形をしていますが、中性脂肪から脂肪酸が切り離されたあとに血液中のアルブミンと結合して肝臓に運ばれます。

肝臓の細胞に脂肪酸が取り込まれるとミトコンドリアに入って、アセチルCoAまで分解されます。アセチルCoAからケトン体であるアセトン、アセト酢酸、β−ヒドロキシ酪酸が作られ、脳のエネルギー源として使われることになります。

このような仕組みがあるので、ブドウ糖が不足しても脳細胞のエネルギー源になることからブドウ糖は必要ないように思われるかもしれませんが、ケトン体はブドウ糖が不足した危機的状態に対応する仕組みであるので、これに頼るのは決してよいことではありません。