発達障害児は食の困難さを抱えていることが多く、中には“極端な偏食”と呼ばれる、食べたくても食べられないという苦しさを抱えていることがあります。それは好き嫌いの範疇の偏食とはまったく違っていて、味は好きなのに、匂いや食べているときの音(噛む音、咀嚼音など)が気になって食べられない、口の中に当たる刺激が気になって食べられないということのように、味覚の問題ではないのに起こっている偏食です。
そんな食の困難さがあって食べられないものであっても、成長のために摂取しなければならない栄養素が含まれていると、それを食べてもらわなくてはいけないこともあります。食べられないものを無理強いされるのは、定型発達(発達障害でない)の子どもであっても苦痛に感じるものですが、発達障害による極端な偏食がある場合には本人の意思を無視したような食べさせ方はしてはいけないことです。
子どもの食を考えるのは保護者の責任で、身体と脳の成長を考えて、食べたがらないもの、嫌いと言っているものでも食べさせようとすることがあります。前においしくないことがわかって、そのときの嫌な記憶が強く残りやすいのが発達障害児に多く見られることだけに、単に味が嫌い、食べるのに苦労をするから嫌だということへの対応では通じないことがあります。
発達障害児への食事の対応として、味が嫌だというなら味付けに工夫する、見た目で食べられないならすり潰して料理に混ぜる、ジュースにして料理に加えるという方法が紹介されることがあります。
しかし、発達障害にみられる感覚過敏の場合には、このような“姑息な手段”は簡単に見抜かれてしまいます。そして、嫌いなものを隠して食べさせるようなことをした人のことを嫌いになってしまいます。そのため、家では食べられないものを学校給食では食べているということがあって、保護者にショックを与えるということも、よくあることです。
子どもは親の言うことを聞いていればよい、やってあげたことを受け入れればよいということではなくて、個性を認め、全人的な対応をしないと、保護者が望むような結果につなげにくくなります。まるで王様の食事に対して気を使うだけ使って、なんとか食べてもらおうとする宮廷の料理人のように、立ち向かう姿勢が必要になってくるということです。