発達栄養106 中鎖脂肪酸は子どもに有効なのか

身体によいというイメージがあると、その食品を健康のために使おうと考えるのは普通の感覚です。中鎖脂肪酸はテレビコマーシャルでも番組などでも盛んに紹介されるようになってきて、販売している店舗も増えています。そして、中鎖脂肪酸を使用する人も増えてきました。

中鎖脂肪酸はMCTとも呼ばれています。MCTはMedium Chain Triglycerideの略で、日本語の中鎖脂肪酸は直訳的な表現となっています。脂肪酸は炭素、水素、酸素が鎖のようにつながっていて、その鎖の長さが中程度というものが中鎖脂肪酸です。

一般に脂肪酸と呼ばれている動物や植物の脂肪酸は長鎖脂肪酸と呼ばれています。長い鎖状になっているので、これを分解するためには消化液が多く必要で、消化にも時間がかかります。これに対して中鎖脂肪酸は鎖のつながりが少ないので消化が早く、早く吸収されて、エネルギーにもなりやすい特徴があります。そのために、太りにくい脂肪酸ということも強調されています。

エネルギーになりやすいというのは、細胞の中のエネルギー産生器官のミトコンドリアに入りやすく、その結果として効率的にエネルギー化されるということを指しています。

長鎖脂肪酸はミトコンドリアに取り込まれるときには、代謝促進成分のL‐カルニチンと結びつく必要があります。結びつくことによってミトコンドリアの膜を通過することができます。

これに対して、中鎖脂肪酸は単体でもミトコンドリアの膜を通過することができます。L‐L‐カルニチンは体内で合成されるものの、そのピークは20歳代前半で、年齢が進むほど合成量が減り、そのためにエネルギー代謝が低下していきます。

中鎖脂肪酸はL‐カルニチンなしでも、ミトコンドリアの中に取り込まれて、効果的にエネルギー化されるのですが、ピークの年齢に達する前の10代後半なら長鎖脂肪酸でも効果的にエネルギー化させることができます。

ただし、成長過程にある10代前半までは、まだL‐カルニチンの合成量が少ないので、長鎖脂肪酸よりも中鎖脂肪酸のほうがエネルギー化させやすいということがいえます。