唾液の分泌のピークは20歳前後とされていて、これを過ぎると分泌量が減っていくことは以前から知られていたことです。高齢者の唾液の分泌量の減少と消化、吸収についての研究は数多くあるのに対して、子どもの唾液の分泌量については、あまり研究されてこなかったところがあります。
唾液は唾液腺(耳下、顎下、舌下)から分泌されていて、消化・殺菌作用がある酵素が含まれています。唾液には常に分泌されている安静時唾液と、食事の時に分泌される刺激時唾液があります。
1日に分泌される成人の唾液の量は1〜1.5ℓとされ、医学書にも掲載されてきました。これに対して子どもの唾液分泌量について明海大学の渡部茂教授が5歳児を対象に調べています。
5歳児の男女15人ずつに、クッキー、たくあん、ソーセージ、マッシュポテト、りんご、ご飯を食べてもらい、飲み込む前に吐き出して増加量を測定するという方法です。
これによって得られた唾液の分泌量は1分当たり3.6mlで、子どもの平均的な食事時間は3食を合わせると80分であることから、刺激時唾液は288mlと算出されました。1日の安静時唾液は208mlと以前から算出されていることから、合計で500ml弱の唾液が分泌されていると報告されました。
この結果だけを見ると、子どもは成人の半分ほどしか分泌されていないことになりますが、同じ手法で成人について調べたところ570mlという結果でした。
幼い子どもは睡眠時間が長いことから安静時唾液の単位時間当たりの量は少ないものの、食事にかける時間が長いために刺激時唾液が多く、唾液の総量は成人と変わらないのではないか、と考えられています。
唾液の分泌量は個人差があり、咀嚼回数にも違いがあることから、今後の研究の結果待ちのところはあります。