生活習慣病の予防・改善のために飲酒をやめるように、飲酒量を減らすようにと医師や栄養士から指導された人が、言われたとおりにやってくれればよいのですが、指導の内容を都合のよいように解釈するのは人間の常です。「酒をやめろ」と言われると、「酒とは日本酒のこと」と勝手な考えをして、焼酎を飲んでいたという人がいました。糖尿病の話をするときに日本酒には糖質が多く含まれるので、糖質が少ない焼酎のほうが血糖値は上昇しにくいということが広まっているせいもあって、焼酎は健康によいというイメージが抱かれているようです。
焼酎のような蒸留酒は醸造酒から作られます。焼酎の元になる醸造酒は日本酒ということになります。実際には日本酒を作ってから、それを焼酎にするわけではなく、日本酒になる前の段階で蒸留が行われています。蒸留することによって糖質の一部が取り除かれているといっても、糖尿病にしても他の生活習慣病にしてもエネルギー量の摂りすぎが問題となるので、飲みすぎれば健康どころの話ではなくなります。アルコールには肝臓での脂肪合成を進める作用があるので、飲めば飲むほど作られる脂肪が増え、脂肪細胞に蓄積される脂肪も増えることになります。
その話をしたところ、日本酒も焼酎もやめた人が今度はビールを飲んでいました。ビールはアルコール度数が低くても量の問題で、多く飲めばアルコールの摂りすぎになります。ビールは食欲が進みやすく、しかも脂っこい料理がおいしく食べられてしまうので、結局のところ体内に入ってくる脂肪と、体内で合成される脂肪のダブルパンチにもなりかねません。
日本メディカルダイエット支援機構が実施している食生活調査票を用いた食生活指導でも、飲酒量が多い人は脂肪摂取が多く、太っている傾向があることが見てとれます。
このような間違いが起こるのは、指導をする医師や栄養士が具体的なことを伝えていないことが原因となっている例もあります。飲酒に関しては、医師や栄養士が飲酒習慣のある場合には患者への指導がゆるやかになる傾向があります。そのことが患者の健康にとってはマイナスになる場合もあり、絶対にダメということで言っているのか、それとも手加減を加えて言っているのか、最後には自分の健康に大きく関わってくるだけに、そこも見極めることが賢い患者、生活者になるための重要なポイントと言えます。